「日本・イスラエル・パレスチナ合同学生会議」に参加し、取材に答えるアカラン・ダナさん(右から2人目)らパレスチナとイスラエルの若者たち=福岡市早良区で2024年8月26日午前11時35分、野田武撮影

 イスラエルとパレスチナ、日本の若者らが合宿形式の対話プログラムを通じて平和を考えようと約20年来続く「日本・イスラエル・パレスチナ合同学生会議」が今夏も日本で開かれた。パレスチナ自治区ガザ地区で戦闘が続く中で実施にこぎ着けたのは、参加を望む若者の存在があったからだ。

 主催は日本の学生団体「日本・イスラエル・パレスチナ学生会議(JIPSC)」。2003年の設立以来、両地域の若者らを日本に招き、交流や対話をする場をほぼ毎年作ってきた。

 しかし23年10月、ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスがイスラエルへ越境攻撃を開始し戦闘が勃発。JIPSCは20回目の節目となる24年の開催を迷いつつも、議論の末「参加希望者がいる限り続けるべきだ」と決めた。

 集まったのはいずれも20代でイスラエル人4人、パレスチナ人3人。そこに日本人9人が加わり、8月17~27日の日程で福岡県内で寝食を共にしながら、紛争などの政治的問題から日常生活まで幅広いテーマで対話し、長崎原爆資料館(長崎市)などを訪問。26日は福岡市内でシンポジウムに登壇した。

 「お互いの目を見て人間と認め合い、解決に向けた対話をしたい」とイスラエルから参加したガイ・サハリ・ダニエルさん(29)は交流を振り返り「それぞれの参加者がどのような人生を歩み、トラウマを抱え、目標を持っているのかを共有できた。今では友達以上に家族と言える存在になった」と語った。同じくイスラエルから参加のリフシェツ・アディさん(22)は「それぞれ想像もできない痛みを抱えながら心をオープンにして話すことはとても難しい」と悩みつつ「不同意があったとしても、愛をもって接することが大事だと思った」と振り返った。

 両地域で争いの爪痕は深い。ガザ保健当局によると、23年10月以降、ガザ地区の犠牲者は4万人を超え、女性や子どもも多く含まれる。パレスチナのセダル・ネブドル・タレクさん(24)は「状況は悪くなる一方。自分ができることはこうして話すことだけ」と悲痛な思いを語った。アカラン・ダナさん(26)は「私たちは人間。兵士ではなく市民であり、誰かの母や父であり、妻や娘。あなたのように夢を抱えた存在でグラフや表の数字ではない」と訴えた。

 交流した西南学院大3年の吉永真史さん(21)は「紛争で自由や生活、最も大切な命がいとも簡単に奪われる現実を前に私は何も語ることができなかった」と無力感をにじませ「あらゆる問題において知る努力を惜しまず続けたい」と決意を新たにした。【日向米華】

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