兵庫県庁=神戸市中央区で2019年3月2日、井上元宏撮影

 兵庫県の斎藤元彦知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題で、告発した職員の懲戒処分を検討する綱紀委員会の席上、疑惑を指摘された一人である当時の総務部長が委員長を務めることに、委員から疑問の声が出ていたことが関係者への取材で明らかになった。職員は公益通報もしていたことから、人事当局は「通報の調査結果が出るまでは処分できないのではないか」と県幹部らに進言したが、元総務部長が処分の検討を急がせたとされる。

 元県西播磨県民局長の男性(7月に死亡)は3月、パワハラなど七つの疑惑を指摘した文書を県議らに送付。4月4日には県の公益通報窓口に通報した。告発文は元部長について、2021年知事選で斎藤氏の事前運動などの疑惑に関与したと指摘している。

 関係者によると、5月2日の綱紀委で、疑惑を指摘された当事者である元部長が委員長を務めることに対し「手続き的に問題はないのか」と委員から質問があった。元部長は「(処分の根拠となる)調査には一切関わっていない。調査結果に基づき判定した処分案の妥当性を判断するだけ」と疑義をかわした。

 また席上、委員3人から「公益通報があった部分のみ処分理由から外すべきでは」「なぜこの時期に処分するのか。公益通報の調査結果を待つべきでは」といった疑問が呈されたが、人事当局が問題ないという趣旨の回答をし、元局長の処分方針が決まった。

 毎日新聞が情報公開請求で入手した関係文書によると、綱紀委の結論を受け、知事は当日に処分を決裁。5月7日、告発は「核心的な部分が事実でない」などとして元局長を停職3カ月の懲戒処分とした。

 8月23日に実施された県議会の調査特別委員会(百条委)で、事情を知る職員は「4月上旬に公益通報の調査結果を待たないと処分はできないのではないかと進言し(当時の)総務部長らを通じて『知事も了解した』と聞いた」「4月中旬、元部長を通じて知事の方から処分ができないのかと言われた」と証言した。

 元部長は斎藤氏の知事就任後、秘書広報室長など中枢ポストを歴任。疑惑の追及が激しくなった7月末に病欠し、総務部長から総務部付となった。綱紀委は幹部職員13人が委員となり処分案を検討する。総務部長が委員長を務める。

 大阪弁護士会公益通報者支援委員会副委員長の三浦直樹弁護士は「元局長の告発は公益通報の対象となる可能性が高い。にもかかわらず、調査結果を待たずに処分を決めたのは、通報に対する報復とも受け取れる。疑惑を指摘された当事者が、処分の判断に加わるのはおかしいと言わざるをえない。委員長を自ら辞退すべきだったのでは」と話している。【山田麻未、中尾卓英、矢追健介】

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