地震の影響で一部が崩れたとみられる建物=宮崎市で2024年8月8日午後6時11分、加藤学撮影

 南海トラフ地震の予兆なのか――。宮崎・日向灘で発生した最大震度6弱を観測した8日の地震。夜になって気象庁が初めてとなる南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を発表した。住民や自治体関係者は突然襲った大きな揺れや直後に発令された津波注意報に戸惑いながら、さらなる巨大地震の影におびえた。

 「このままビルごと倒れて死ぬかもしれないと思った。こんな揺れは初めて」

 震度5強を観測した宮崎市最大の繁華街「ニシタチ」の雑居ビル4階の居酒屋「一粒万倍」店長、日吉一生さん(31)は、予約客を迎える準備をしていた時に大きな揺れに襲われた。「揺れているなと思ったら、いきなりガタガタと激しく横に揺れ始めた」。グラスを冷やす冷蔵庫が倒れそうになり、必死に押さえたが、調理場に置いていた焼酎などの瓶が激しく音を立てて落ちたという。

 「急にガッと激しい横揺れが来た。家はめちゃくちゃのまま高台に避難した」。宮崎市の漁師、木崎瞳さん(42)は振り返る。自宅マンションでは食器棚や引き出しが飛び出し、30秒ほどの横揺れが続いた。車で高台にある親族の家に向かったが普段は20分の道が避難の車で渋滞し、1時間かかった。津波注意報が出たため海には近づけないといい「船がどうなったか確認できていない」と不安を募らせた。

 最大震度6弱を観測した宮崎県日南市の漁師、浜名督英さん(38)も、津波注意報を受け海岸から約1キロの自宅から高台に避難。「『南海トラフ』とよく言われるが実際に大きな地震が来ると、いくら心構えをしても体が動かずパニックになった」と声を震わせた。

 各地で崖崩れも発生し、震度4を観測した鹿児島県志布志市によると、市内で「幅30メートル、高さ50メートルでのり面が崩れている」との情報が寄せられた。人的被害や家屋が巻き込まれたとの被害は現時点では確認されていないという。

 一方、地震発生から約2時間半後の午後7時15分になって気象庁が発表した臨時情報を受け、自治体担当者も対応に追われた。

 宮崎県延岡市は災害情報メールを出した。今後はマニュアルに沿って対応する予定だ。同県串間市は対応を検討中といい、危機管理課の担当者は「自主避難をしている人が一部いるようだが、今後、状況に応じて対応する。物資は現時点で足りており、特に混乱もなく静観している」と話す。

 鹿児島県西之表市は8日中に防災無線で住民に注意を呼びかける。今後の状況次第では、避難所を開設することになるといい、防災消防係の担当者は「そうなれば職員が交代で24時間常駐しなければならず人的手当てが大変だ」と語った。

 JR九州によると、地震による停電の影響で、九州新幹線博多―鹿児島中央間と九州新幹線長崎ルート(西九州新幹線)の武雄温泉―長崎間の全線が一時運休。津波注意報が出た宮崎市の南宮崎駅では、乗客や駅員を避難させた。

 九州電力によると、運転中の川内原発2号機(鹿児島県薩摩川内市)と、玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)は通常通り運転している。川内原発1号機は定期検査中。原発以外の発電所にも影響はなかった。

 四国電力によると、震度4を観測した愛媛県伊方町の伊方原発に異常は確認されていない。伊方原発は3号機が定期検査で停止中で、1、2号機は廃炉作業中。【加藤学、河慧琳、栗栖由喜、佐藤緑平】

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