頭上からの投石を想定し、重さ約8キロの盾を掲げる記者(中央)ら=福岡市東区の第1機動隊で2024年6月13日午後4時10分、栗栖由喜撮影
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 福岡県警の24年春の異動で、機動隊に初めての女性隊員となる約10人が配属された。女性記者(27)が報道関係者向けの1日体験入隊に参加し、「最強部隊」とも呼ばれる機動隊の過酷な訓練の一端に触れた。

 福岡市東区の県警第1機動隊。6月、用意された上下紺色の出動服に身を包むと背筋が伸びる思いがした。とはいえ、運動音痴の記者は、体験できる喜びよりも「無事に帰れるだろうか」という不安の方が勝っていた。機動隊は大規模災害の救助活動やテロ警戒にあたり、福岡・筑後地区を拠点とする第1機動隊と北九州・筑豊地区拠点とする第2機動隊がある。第1機動隊には核や生物、化学物質を使用したテロに対応する部隊も編成されている。

 午前からの最初の訓練は、抵抗する容疑者を必要最小限の力で制圧する逮捕術だ。柔道着に防具を身につけ、竹刀に布を巻いた警棒(長さ約60センチ)で男性隊員と打ち合うと、男性隊員から腹部や肩を軽々と打たれた。2分間5セットの予定だったが、たった2セットで息が上がり疲れで立ち上がれなくなった。

重さ約8キロの盾を持ちながらグラウンドを走る記者(左から3人目)ら=福岡市東区の第1機動隊施設で2024年6月13日午後4時24分、栗栖由喜撮影
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 午後からは救助のためのレンジャー訓練。「イチ、ニー。イチ、ニー」。3階建ての屋上に相当する高さ約10メートルから、右手に握ったロープで体を支え、隊員の掛け声に合わせて降下する。高所は得意だが、急勾配を背後を見ずに降りるのは緊張した。

 警備訓練では、腕のプロテクターなど重さ約6キロの装備をつけて腕立て伏せや腹筋をこなす。投石や火炎瓶などの攻撃から身を守ることを想定し、重さ約8キロの盾を頭上に構えると、あまりの重さに腕が震えて力が抜けていく。腕を降ろそうとすると「下げない!石が落ちてくるよ!」と隊員の拳が盾に降り注ぐ。その後盾を持った状態と置いた状態で各2周のランニング。最初は最前列の次にいたものの、徐々に後退して、ついに最後尾からも遅れた。リタイアが頭をよぎるが、女性隊員の励ましを受けて完走した。記者が体験した内容は「普段の訓練の1~2割程度」といい、その過酷さは想像を絶する。

 同隊は元日に起きた能登半島地震に出動し、石川県玖珠市で倒壊した家屋の下敷きになった90代女性を地震発生から約124時間後に救出した。「一番きつい訓練をこなすことで、過酷な現場でも活動できる」と中村典子副隊長(58)。約7時間に及んだ訓練を終え、その言葉の重みを身にしみて感じた。【河慧琳】

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