漁港で漁業従事者と釣り客が共存するには--。2年前に静岡県西伊豆町に移住したITクリエーターで「ウミゴー」社長の国村大喜さん(38)が釣り場を有料で予約できるアプリ「海釣りGO!!」の普及に取り組んでいる。昨年7月末に同町の田子漁港でサービスを開始し、来月には同町の仁科漁港に拡大する。国村さんは「今後は漁業体験なども企画して、漁港のかつてのにぎわいを取り戻したい」と話している。
違法駐車やごみの放置、バーベキュー、漁船への迷惑行為など、釣り客が自治体や漁協とトラブルになるケースは全国的に見られる。田子漁港でもコロナ禍で釣り客が増加していた2022年7月、港内での釣りを厳格に禁止した。
同じ時期に仕事の拠点を横浜から同町に移したのが国村さんだった。滋賀県生まれで琵琶湖でブラックバス釣りを始めて以来の釣り好き。「田子漁港での釣りを楽しみにしていたのでびっくりした」という。移住当時、魚の養殖業を支援する会社で役員を務め、「海釣りGO!!」は同社の事業の一つとして始動した。同アプリの漁港でのサービス提供は全国初の取り組みだという。
国村さんは漁協や町と調整を重ね、田子漁港に釣りの可能エリアを設けた。アプリでは同エリアに30人の利用者枠を設定。利用者はアプリを通じて、釣りは1時間300円、駐車場は同100円の利用料を支払う。小学生以下と町民は無料とした。さらにアプリでは、基本的な禁止事項を示して同意を求める仕組みになっている。
今年2月までの半年で延べ3217人が利用し、339万円の利用料収入があった。これを原資に、港内に巡視員を配置。また救命はしごの設置やAED設備の更新、屋根付きの休憩所・水道の設置など漁港の施設の充実も図ってきた。
伊豆漁協田子支所の真野創支所長は「港内での釣りを再開するとまた騒動が起こるのではという声もあったし、半信半疑だった」と振り返る。しかし導入後、釣り客のマナーは格段によくなり、さらに客層に家族連れも目立ち、地元の人との交流も生まれたという。同町産業振興課の松浦城太郎係長は、漁協の直接的な収入だけでなく、近隣の店舗での飲食など経済波及効果も出ていると指摘する。
田子漁港での効果もあり、同漁協仁科支所も漁港の一部を釣り場として開放する。国村さんは今年2月に「ウミゴー」を設立して独立した。来年には10漁協での実施を目標に据え、釣りを禁止にしている全国の漁協にアピールしていくという。【若井耕司】
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