米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)所属の米兵が少女への性的暴行事件で起訴されたことが明らかになり、沖縄県内に怒りが広がっている。沖縄では米軍関係者による性犯罪や殺人事件がこれまでも度々起こり、県民を不安に陥れてきた。さらに今回は、外務省が3月に事件を把握したにもかかわらず、県には連絡もなかった。米軍基地の集中ゆえに繰り返される被害に、市民団体のほか、県内各地の議会で日米両政府への抗議の動きが出ている。
「米軍関係者による事件・事故が発生する度に抗議や要請を行っているにもかかわらず、このような事件が発生したことは、在沖米軍の教育や管理体制が不十分と言わざるを得ない」
池田竹州(たけくに)副知事は27日、県庁を訪れた同基地第18航空団司令官のニコラス・エバンス准将らを前に厳しい表情で抗議文を読み上げた。エバンス准将は「時々に応じて適切に対応している」と述べたが、謝罪はなく、具体的な再発防止策も示さなかった。
起訴状などによると、同基地所属の米空軍兵長、ブレノン・ワシントン被告(25)は2023年12月、16歳未満の少女を誘って基地の外にある自宅に連れ込み、暴行を加えたとされる。那覇地検が3月27日、わいせつ目的誘拐と不同意性交等の罪で起訴。岡野正敬外務次官はこの日、エマニュエル駐日米大使に綱紀粛正と再発防止の徹底を申し入れたが、6月25日に事件が報道されるまで県には連絡がなかった。
県警によると、沖縄の日本復帰(1972年)から23年までの間に、米軍人・軍属とその家族による刑法犯の検挙件数は6235件。このうち現在の不同意性交等にあたる容疑での検挙件数は少なくとも134件(検挙者数157人)あった。近年では、16年にうるま市の女性(当時20歳)が面識のない元海兵隊員の男性にわいせつ目的で暴行され、殺害された。21年には那覇市の駐車場で米海兵隊員が女性に暴行しようとし、けがをさせた。
米軍側は再発防止策の実施や綱紀粛正を誓うが、23年は米軍関係者による刑法犯の検挙件数が前年より18件多い72件となり、過去20年で最も多くなった。
「どれだけの恐怖と絶望が被害者にもたらされたかと思うと、心がえぐられる思いがする」。米軍関係者による性犯罪を記録する「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」などのメンバーは27日、県庁での記者会見で日米両政府への要請文を読み上げ、「いつになったらこういう事件がなくなるのか。本当に真剣に捉えてほしい。二度と子どもたちを犠牲にしないで」などと口々に憤りを語った。
同会の高里鈴代共同代表は「沖縄にいる米兵らは国家公務員として駐留しており、重い責任が問われる。日本政府が米軍に申し入れた綱紀粛正とは具体的に何を指し、どう再発防止につながるのか、確認していく必要がある」と強調した。
県内の議会でも党派を超えて事件に抗議する動きが広がっている。那覇市や浦添市の議会は事件に抗議する日米両政府宛ての意見書や決議を全会一致で可決した。県議会でも同様の意見書や決議の可決に向け、今後、与野党の間で文言を調整する見通し。自民党沖縄県連の島袋大幹事長は27日、外務省から県に連絡がなかったことについて、「憤りを感じる。(文案を)もんで、全会一致できるような態勢に持っていくべきだ」と語った。【比嘉洋、喜屋武真之介】
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