木の横で「宙に浮いている」状態のクマ。映像には後ろ脚をしきりに動かす様子が捉えられています。6月に入っても住宅地近くでの目撃が相次ぐなか、暴れたクマにかまれる被害が出ています。
■庭で飼い犬とクマが“格闘”
クマが住宅に侵入する緊急事態がまた起きました。
福島県白河市の住宅の庭に2日、クマがいるのを住民が目撃しました。
自宅でクマを目撃 増田仁敏さん(66)
「カーテンを閉めていて犬が『ギャー』っという声を出したので、カーテンを開けてみたらここでクマと格闘していた」
クマが飼い犬と格闘していたといいます。
午後8時ごろ、自宅にいた住民が庭で犬が吠えていることに気付き、窓をのぞくと体長1メートルほどのクマが犬に覆いかぶさっていたといいます。
自宅でクマを目撃 増田仁敏さん
「覆いかぶさるようにして(犬に)かみ付いたのか、背中の辺りによだれなのかシミのように付いていた。(犬は)おびえてしまい外に出てこようとしない」
襲われた犬はクマにかまれた可能性があり、背中にはクマのよだれのようなものが付いていたといいます。
住民が窓をたたくとクマは山の方に去っていきました。
自宅でクマを目撃 増田仁敏さん
「子グマかもしれないので親グマがいると怖いと思って、ここから爆竹を投げて追い払うようにした」
群馬県ではミツバチの養蜂を行っていた住宅に深夜、クマが侵入。自宅で寝ていた夫婦がサッシを開けると突然、クマに襲われて重傷を負っています。
クマが現れた住宅の周辺では不安の声が広がっています。
近隣住民
「市の防災無線で『クマが出たので注意するように』と。生活圏内にクマが出れば散歩や仕事するなかで怖い。不安」
■何が?宙に浮いているクマ
長野県では自宅からわずか30メートル先で住民も目を疑う光景が…。
自宅前でクマを撮影 鈴木芳則さん
「“宙に浮いているな”と。どうなっているのか分からなくて」
木の横で宙に浮いているクマが出現。けが人が出る重大な問題が起きていました。
長野県の住宅からわずか30メートルで撮影されたクマの映像では、畑に設置したネットの先にクマがうずくまっているのが分かります。
撮影したのは地元の猟友会にも所属する住民の鈴木さんです。
自宅前でクマを撮影 鈴木芳則さん
「最初に映した時には木の下にいて、クマがいるなと分かったが、どういう状況か分からなかったので、いったん離れて高台に行って見やすい位置でズームして撮った」
離れた場所から再び撮影すると…。
自宅前でクマを撮影 鈴木芳則さん
「『あれ?宙に浮いているな』と。どういうふうになっているのか分からなくて」
クマが木の横で宙に浮いている不思議な光景が…。
顔と前脚は木に付いた状態で、宙に浮いた後ろ脚をしきりに動かしています。
自宅前でクマを撮影 鈴木芳則さん
「2つのわなに後ろ脚が掛かってて、手(前脚)の力と口に木をくわえていた状態で浮いているのが分かった」
クマの後ろ脚にはワイヤロープが掛かっています。これはイノシシやシカ対策で設置した「くくりわな」だといいます。
自宅前でクマを撮影 鈴木芳則さん
「以前、イノシシに畑を荒らされたことがあり、畑を守る意味でその場所にわなを仕掛けている」
野生動物から畑の食害を防ぐため、猟友会のメンバーでもある鈴木さんは自宅前にわなを設置。
この「くくりわな」でイノシシやシカを捕獲することは許されています。
しかし今回、このわなにクマが誤って掛かってしまいました。クマを捕獲するには別の許可が必要で、くくりわなに掛かってしまった場合は、その後、山に返す対応がなされているといいます。
自宅前でクマを撮影 鈴木芳則さん
「麻酔銃で眠らせて放獣する」
クマはわなから逃れようとして前脚を使い、木に登り始めます。
自宅前でクマを撮影 鈴木芳則さん
「やっぱりクマの筋肉は改めてすごいと思った。すごく力が人間と比べると断然、違う」
■「くくりわな」引っかかるクマ急増
クマが誤ってわなに掛かることは「錯誤捕獲」と呼ばれて今、各地で起きています。しかし、わなに掛ったクマは暴れるため、放獣するには大きな危険が伴います。
同じ長野県では今月、錯誤捕獲のクマに人がかまれる被害が出ています。
長野県塩尻市で1日、シカのくくりわなに掛かったクマが見つかり、猟友会と市の職員が現場へ。するとクマが突然…。
現場を目撃した人
「(最初は)潜んで動かなかった。人が見つけて近付いたらクマが動き始めた」
わなに掛かったクマに猟友会や市の職員が襲われました。
現場を目撃した人
「捕獲することになったが、その時にクマがわなをちぎって銃を撃つ人(猟友会員)に襲い掛かってきた。市の職員はそれを助けに棒を持って向かっていってしまった。『行くな』と言ったけど行ってしまったのでかまれた」
現場にいた人によりますと、クマはわなから抜け出し、猟友会の会員を襲おうとしたといいます。
市の職員が助けに入り、クマを木の棒でたたくなど反撃。ところが、クマに左手をかまれて親指を5針縫うけがをしました。
クマは体長約80センチの成獣とみられ、猟友会にその場で駆除されました。
自宅前でクマを撮影 鈴木芳則さん
「本当に今、改めて怖いという思いがした」
去年から自宅の前でクマがわなに掛かるようになったという鈴木さん。高校生から小学生までの子ども4人がいて、不安な日々を過ごしています。
自宅前でクマを撮影 鈴木芳則さん
「小さい子どももいるので、去年(クマが)捕まってからは送迎を車でするようになった。できるだけ夜は外で遊ばせないように配慮している」
■なぜ?わなにかかるクマ 相次ぐ理由
なぜ、わなに掛かるクマが各地で相次いでいるのでしょうか。
岩手大学 農学部 山内貴義准教授
「今、国が補助金を出してシカやイノシシを捕ってもらっている。ハンターが少なくなっていて、わなの数がどんどん増えていったので、それに伴ってクマが錯誤捕獲される確率も高くなっている。クマが掛ると人間に対する危険度は格段に上がる。数メートルの範囲は動けるようになっているので人が襲われたり、わなを壊して襲い掛かったり、そういった事故が頻発している。クマがよく出る場所には(わなを)設置しない。クマが錯誤捕獲で掛かった場合にすぐに対応できる体制を整えることが重要」
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