2023年10月9日に鳥島近海を震源とする地震があり、広い範囲に津波注意報が出た=気象庁ウェブサイトから

 2023年10月、大きな地震を観測していないのに、関東から沖縄にかけて広範囲に津波が発生した。この「謎の津波」について、防災科学技術研究所などのチームは31日、東京・伊豆諸島の鳥島近海にある海底カルデラが繰り返し隆起することで起こったとの解析結果を、千葉市であった日本地球惑星科学連合大会で発表した。

 通常、津波は震源の浅いマグニチュード(M)6・5以上の地震で発生する。ところが、東京大地震研究所などの解析によると、昨年10月9日未明、鳥島近海で最大M5クラスの地震が約1時間半の間に計14回、断続的に発生。それに伴って小さな津波が14回起き、増幅されて大きくなったことが分かっている。また、その後の調査で、震源付近に海底カルデラや海底噴火の痕跡が見つかった。

 防災科研の久保田達矢・主任研究員(地震学)らのチームは、津波波形の解析から、14回の地震と津波の発生源はいずれもこの海底カルデラ付近と特定。さらに、カルデラが繰り返し隆起し、時間と共に隆起量が増え、最終的に高さ約3メートルに及んだと推定した。

 カルデラが隆起する現象には、カルデラに沿ってできた環状の断層がマグマの押し上げで「はね上げ戸(トラップドア)」のように持ち上がる「トラップドア断層破壊」という種類がある。伊豆・小笠原諸島の他のエリアでは、顕著な地震を伴わない津波が過去に繰り返し確認されている。

 今回もこの現象が要因だった可能性があり、チームはさらに解析を進める。久保田さんは「津波を起こした海底の動きが分かってきた。だが、カルデラとの関係の解明にはさらなる観測や研究が必要だ」と話した。【垂水友里香】

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