旧経営陣による粉飾決算が疑われている白井松器械=大阪市中央区で2024年5月10日午前9時14分、川地隆史撮影

 決算を粉飾して金融機関から不正に融資を受けたとして、大阪府警は30日、医療機器製造・販売会社「白井松器械」(大阪市中央区、民事再生手続き中)の旧経営陣2人を詐欺容疑で逮捕した。府警は、経営不振に陥った同社が借入金の返済資金を得るため、金融機関に虚偽の情報を伝えて融資金をだまし取ったとみている。

 逮捕されたのは元社長の弘野俊彦(62)=大阪府豊中市=と、元専務の羽田同徳(とものり)(68)=同府枚方市=両容疑者。羽田容疑者は財務の責任者だった。

 2人の逮捕容疑は2022年12月、白井松器械の経営が好調なように装った虚偽の決算書を大阪市内の金融機関に提出。金融機関に3億円を限度額とする融資枠の設定をさせたとされる。さらに、23年2月には資金を事業拡大に充てるとうその説明をし、限度額を5億円に引き上げさせたとしている。府警は2人の認否を明らかにしていない。

 ただ、会社関係者によると逮捕前、弘野容疑者は「責任は免れない」、羽田容疑者は「赤字は良くないので粉飾に手を染めた」と話していたという。事件当時、同社は債務超過に陥っていたという。

 府警捜査2課によると、架空の売り上げを計上したり、借入金を過少に記載したりして、決算を良く見せかけた。今回の契約は、限度額の範囲内であれば、会社側が金額や時期を決めて、借り入れや返済ができる「当座貸し越し」と呼ばれる仕組みだった。金融機関側が24年3月、府警に被害届を提出した。

 白井松器械は1872年創業の老舗。大阪を拠点に、医療・製薬分野で使われる機器の卸売りや自社製品の開発販売で売り上げを伸ばした。しかし、2000年ごろから製薬業界の再編などで経営が徐々に悪化した。会社関係者によると、両容疑者は13年にそれぞれ社長と専務に就任。粉飾決算は20年以上前から続けられており、歴代の経営陣の一部に引き継がれたとみられる。弘野容疑者は周囲に「歴代行われてきたことなので、止めなかった」と打ち明けていたという。

 同社は23年9月、大阪地裁に民事再生法の適用を申請。地裁から再生手続き開始決定を受けた。負債総額は約33億円で、このうち約28億円が10金融機関からの融資だった。同社はスポンサーの下で事業を継続させる方針。【岩本一希、川地隆史】

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