4

運転手の時間外労働時間が規制される『2024年問題』で、人手不足が深刻化しています。 ドライバー不足が、修学旅行にも影響しています。

■バス業界のドライバー不足 学校行事に影響

 5月中旬、SNSに「中学校の修学旅行がピンチ。貸し切りバスが手配できなかったんだと。来週なのに…」という投稿がありました。

「中学校の修学旅行がピンチ」SNSでの投稿 この記事の写真は27枚

 投稿者が旅行会社から配られたという、保護者宛ての書面には、『ドライバー不足と時間外労働の上限規制により、バス会社から断りの連絡があった』と記載されていたということです。

保護者宛ての書面には…

 経緯について番組で、この書面を配布した近畿日本ツーリストに話を聞きました。
 当初、新大阪から奈良までのバスを確保していたが、スケジュールの変更で出発地が京都になり、その後、複数のバス会社に京都発のバスを依頼したが確保できず、在来線を利用することになったということです。

近畿日本ツーリストはバスを確保できず在来線を利用

近畿日本ツーリストの担当者は、
「観光業界全体として、人手不足の影響が懸念される中、お客様の旅行に支障が出ないようあらかじめ代替のルートや交通手段を用意しておくなど、今後も誠心誠意対応していきたい」としています。

近畿日本ツーリストの担当者は

 他にも、富山地方鉄道では、修学旅行のバスドライバーを確保するため、5月10日〜17日の間、高速バスなど計60便を運休しました。

富山地方鉄道はバスドライバー確保で…

 会社側は、高速バスを予約していた約20人に、他の便への変更や払い戻しの対応をとったということです。

会社側の対応

富山地方鉄道の担当者です。
「修学旅行の予約を受けた2年前は、他のバスの運行に支障はないはずだった。しかし、4月から時間外労働に規制ができたことで、運転手の確保が難しくなり、高速バスを運休せざるを得なくなった」といいます。

富山地方鉄道の担当者は

 小学校の行事にも影響がでています。今年2月、北海道札幌市内の小学校のスキー学習がドライバー不足でバスを確保できず、数日前に中止になりました。

小学校ののスキー学習が数日前に中止に

スキー学習の中止を受けて、児童の母親は、
「コロナでいろいろ制限され、我慢してきた中でようやく行ける状況になったのに、今度は大人の事情で小学校のせっかくの思い出作りが無くなるなんて…。寂しいというか、かわいそう」と話しています。

スキー学習が中止になった児童の母親は

次のページは

■トラック追突で死亡事故「風邪薬を飲んで運転した」

■トラック追突で死亡事故「風邪薬を飲んで運転した」

 運転手への負担が原因かどうかはわかりませんが、トラックの追突で死亡事故が起きました。
 5月14日の午前7時半すぎ、埼玉・戸田市の首都高速でトラックが乗用車に追突して7台が絡む事故が起きました。
 3人が死亡し、2人がけがをしています。 追突したトラックを運転していた男が、過失運転致死の疑いで逮捕されました。

トラック追突で死亡事故

 事故を起こしたトラックは、事故現場の10メートル以上前から速度を落とさず、時速77キロで追突。

運転していた降籏容疑者は、
「2キロくらい前から眠気を感じた。数百メートル前から記憶がない」と話しています。

トラックを運転していた容疑者は「記憶がない」と話す

 降籏容疑者は事故の2日前、体調が悪化し、のどに痛みがあり、風邪薬を服用していました。
 事故の前日には、39℃近い高熱と頭痛があり、鎮痛剤を服用。 事故の当日も体調が悪く、職場に向かう途中で、鎮痛剤を買って飲んだということです。

降籏容疑者は、
「(仕事への責任感から)仕事は休めない」と話しています。

事故の2日前から体調が悪化

また、降籏容疑者は、
「運転中も頭痛がした。高速を降りて休憩することもできたが、仕事を終わらせたい一心で無理をした」と話しています。

 警視庁は、体調や薬の服用の影響で、運転中に突然意識を失った可能性もあるとしています。

運転中に突然意識を失った可能性も

 運転中に要注意の薬です。
 一部の、風邪薬、鎮痛薬、せきどめ薬、胃腸薬、花粉症の薬、血圧降下薬などの飲み薬や座薬などでは、眠気や注意力の低下などの副作用があるものもあります。

運転時に要注意の薬 要注意の薬を確認する方法です。
●市販薬は、パッケージや添付文書の注意書きを確認してください。
●処方される薬については、医師や薬剤師から注意があります。

池袋大谷クリニックの大谷先生によると、
「不安がある場合は、服用前に、医師や薬剤師に相談をして下さい」とのことです。

池袋大谷クリニック 大谷義夫院長

 降籏容疑者は、なぜ体調が悪いのに運行したのでしょうか。
 運送会社は「『体調が悪く運行できないならば、時間に関係なく連絡するように』としているのでその認識だったが、降籏容疑者から連絡がなかった」として、運行を中止しませんでした。

なぜ体調が悪いのに運行?運送会社は

 事故当日は、『降籏容疑者が予定よりも早く出発したため、通常は行う体調確認ができなかった』ということです。

運送会社は、
「代わりの人員を用意できていたので、ドライバーを差し替えることになれば対応できた」と説明しています。

事故当日について運送会社は

 17日に、警視庁は運送会社を家宅捜索しました。 事故前の勤務状況などを詳しく調べる方針です。

運送会社を家宅捜索し状況を詳しく調べる方針

次のページは

■トラックドライバー 働き方の現状

■トラックドライバー 働き方の現状

 物流の『2024年問題』の現状です。
 年間の労働時間は、全産業平均の2112時間と比べて、トラックドライバーは2512時間と、約2割長くなっています。 主な要因は、長時間の運転、荷待ちの時間、積み込みなどです。

トラックドライバーの年間労働時間と主な要因

 宅配便の個数です。
 2002年は27億5100万個でしたが、2022年は50億600万個と、20年で2倍近く増えています。

宅配便の年間の個数は20年で2倍近くに

 長時間労働の見直しで、2024年4月から時間外労働に年960時間という上限規制が適用されました。
 2022年時点で、トラックドライバー全体では約3割、長距離輸送では約4割が、この時間外労働年960時間を超過していました。4月からこの規制が適用されたため、人手不足が深刻化している状況です。

時間外労働の上限規制 トラックドライバー全体の約3割が超過(2022年)

次のページは

■2024年問題で収入減 トラック業界の転職事情

■2024年問題で収入減 トラック業界の転職事情

 『2024年問題』のトラックドライバーへの影響です。
 時間外労働の上限規制などで労働時間が減少し、収入が減ります。 年間所得は全産業平均489万円に比べ、トラックドライバーは446万円と、約1割低いのですが、これが、さらに減ります。

トラックドライバーへの影響

物流ジャーナリストの坂田さんによると、
「今後、運送会社は、ドライバーの待遇を改善して事業拡大する運送会社と、ドライバーの待遇を悪化させジリ貧になる運送会社の二極化が進んでいく」ということです。

物流ジャーナリスト 坂田良平氏 坂田さん
「4月に規制が始まったが、意外にも転職する人は少なかった。本格化するのは、ボーナスが出る来月から再来月。転職するとしたら、待遇改善を図っている会社や個人事業主の配送ドライバーとして独立する」 転職が本格化するのは6、7月か

 トラックドライバーの高齢化の実態です。 2022年時点で、50代以上の人数が全体の約半数です。

トラックドライバーの高齢化の実態

 ある会社の場合、50代のベテランドライバーが多く、最年長は74歳ということです。

担当者は、
「免許離れの影響もあり、若者が入ってこない。最近24歳のドライバーが入ったが、業界でもかなり珍しい」と話しています。

運送会社の担当者は… 坂田さん
「ドライバーの高齢化は、年々進行している。このまま行けば、5年後10年後に深刻なドライバー不足に陥るのは目に見えている。企業の多くは、ドライバーの若返りを狙っている」 5年後10年後には深刻なドライバー不足?

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年5月29日放送分より)

この記事の写真を見る(27枚)
・バス運転手不足…各地で減便、修学旅行にも影響 各社は続々給料&待遇UP 移住支援も・「川に白い水が流れている」で発覚 38年間トイレなどの汚水垂れ流し ・高齢運転手との事故で“生活一変” 「廃業」「後遺症」…交通トラブルの“その後” ・軽自動車に衝突されたレクサス 700万円と判明 事故の瞬間…店は ・カスハラ“女性運転手の涙”理不尽な実態 恐怖の現場「いずれさ僕が潰してあげる」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。