コミュニティーFMで防災・減災に関する情報を発信し続ける関西大(本部・大阪府吹田市)の学生が、能登半島地震の被災地で体験したボランティア活動を放送で報告した。「被災地のことを忘れないで」。現地の住民から受け取ったメッセージを胸に、支援の継続を呼びかけている。放送はインターネット上で公開されている。
学生は社会安全学部の近藤誠司教授(災害情報論)のゼミ生。コミュニティーFMやケーブルテレビなどのローカルメディアと連携し、地域防災の啓発に取り組んでいる。
「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)でグランプリ(2019年度)など数多くの賞を受賞。現在は所属する26人が10のプロジェクトを進めている。近藤教授は「学生が実体験に基づき得た知識や情報を発信することで新たな気付きが生まれ、私を含めた受け取る側の学びにもつながる」と狙いを説明する。
連携しているコミュニティーFMの一つが、滋賀県草津市の「えふえむ草津」だ。「Happy BOUSAi(ハッピー防災)」という番組で、パーソナリティーと市危機管理課の職員を交えて、日常生活でも役立つ防災情報を届けており、17年6月から続けている。
7日分の放送には、石川県輪島市町野町地区で3月25~26日に実施したボランティア活動の様子を発信した。ボランティアは、阪神大震災の記憶の継承に取り組むNPO法人「阪神・淡路大震災1・17希望の灯(あか)り」(神戸市)の藤本真一代表理事が引率し、ゼミからは5人が参加した。
収録には、いずれも4年の西出梨乃さん(21)と矢嶋爽花(さやか)さん(21)が臨んだ。ネットには編集された約33分が公開されている。
放送ではまず、500年以上前に建てられ、地震で倒壊した岩倉寺の本堂から仏具を搬出した経験を振り返った。歴史的価値のある仏具を多数搬出することができ、西出さんは「住職のうれしそうな表情を見ることができ、力になれたのがうれしかった」と語った。
ただ、余震が起きる可能性があるなど危険が伴うため、矢嶋さんは安全確認を徹底し、短時間で作業したと強調。「ボランティアに慣れた大人の判断もあり、けがすることなく終えられた」と説明した。
その後、避難所前で炊き出しをしたり、チームに分かれて民宿や家屋の掃除を手伝ったりした様子を解説した。
初めて被災地でのボランティアに参加した矢嶋さんは、現状を目にすることで得られる情報があると学び、「最初のきっかけは何でもいいので、少しでも多くの人がボランティアや被災地の状況などに興味を持ってもらいたい」と話した。
被災者からは「来てくれてありがとう。周りの人にも被災地の状況を伝えてほしい」と言葉を掛けられた。このことが印象に残っているという西出さんは「現地の人は『災害があったことを忘れられるのでは』と思っていながら不安な生活を過ごしている。離れていても『被災地を忘れない』と寄り添い続けたい」と、今後も継続した支援が必要だと実感している。
ゼミ生は兵庫県尼崎市のコミュニティーFM「みんなのあま咲き放送局」でも防災情報を発信しており、被災地での活動報告を31日分放送の回に向けて収録した。5月下旬にも2回目のボランティアで輪島市入りした。【山本康介】
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