2月に開催された「北九州マラソン2024」(北九州市など主催)で倒れ心肺停止状態になった同市の40代男性を救ったとして、市消防局小倉北消防署は22日、大会にメディカルサポートランナーとして参加した看護師の若杉大輔さん(34)=福岡県志免町=ら3人に感謝状を贈った。若杉さんは男性を救急隊員へ引き継いだ後にレースに戻って完走。男性からは「命をつないでいただいた」とお礼のメールが同署を通じて3人に届いた。
若杉さんの他に感謝状を贈られたのは、AED(自動体外式除細動器)サポート隊としてボランティア参加した九州共立大4年、太田翔馬さん(21)=福岡市博多区▽移動AED隊として参加した薬剤師、神崎愛さん(36)=同市中央区。AEDサポート隊と移動AED隊は、1キロごとに配置されていた。
3人によると、救命された男性は17キロ地点手前の北九州市小倉北区の福岡県立小倉高校付近で突然倒れた。16キロ地点と17キロ地点の間を見回っていた太田さんが「沿道の歓声とは違う声」を聞いて駆け付けると、男性がうつぶせに倒れており、あごに裂傷を負っていた。
男性の100メートルほど後方を走っていた若杉さんは太田さんらの姿を見つけて駆け付けた。男性は初め呼吸があったが、目がうつろで意識がなく、ほどなくして脈や呼吸が止まったため、若杉さんが「AEDを持ってきてください!」と叫んだ。
17キロ地点に待機していた神崎さんは、走ってきたランナーから「AEDを持っていってあげて」と言われて現場へ駆け付け、ペアの消防職員と共にAEDを作動させた。その頃には太田さんが連絡した16キロ地点のAED隊も到着。太田さんや若杉さんを含む10人前後で代わる代わる心臓マッサージを続け、男性は心拍と自発呼吸を取り戻した。
男性を救急隊員に引き継いだ後、若杉さんはレースに復帰。通常はフルマラソンを4時間ほどで走りきるが、この日は救命活動にあたった時間を含めて4時間30分ほどでフィニッシュした。走っている間も男性のことがずっと気がかりだったが、フィニッシュ後に関係者から「助かったらしい」と聞き、胸をなで下ろしたという。
22日に小倉北消防署であった表彰式で、男性から3人に宛てたメールを相良智昭署長が代読した。男性は3月に退院し「後遺症もなく、日々元気に過ごしております。たくさんの方々が連携して、迅速に救命処置を行っていただき、命をつないでいただきました。私は北九州マラソンに命を救われました。本当にありがとうございました」と感謝の言葉を記した。
神崎さんは「復帰されたと聞いて本当にうれしかった」と喜んだ。相良署長は「皆さんの命のリレーは、どれか一つが欠ければ、助かっていなかったかもしれない」と謝辞を述べ、「大会組織としての体制も良かった」と話した。
メディカルランナーは医師、看護師、救急救命士の資格を持ち、事前に登録することで、緊急時には救急救命活動を実施するランナー。大会事務局によると、2024年大会には46人が登録していた。【成松秋穂】
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