以前に指定暴力団山口組・旧五菱(ごりょう)会系ヤミ金融業者だった男性ら4人が出資法違反(超高金利)などの疑いで逮捕された事件で、うち2人は多重債務者だったことが捜査関係者への取材で判明した。2人は「借金の返済に窮し、ヤミ金融への協力を迫られた」と供述し、顧客からの返済金の運び役をしていたとみられる。
警視庁生活経済課によると、2人は東京都板橋区大山金井町の飲食店従業員、中森正敏(47)、横浜市西区中央1の無職、伊藤輝代子(50)両容疑者。ヤミ金融など複数から借金をしている多重債務者だった。
捜査関係者によると、2人とともに逮捕された東京都大田区大森北1の無職、針谷恭輔容疑者(44)は旧五菱会系のヤミ金融業者の従業員だったが、2018年ごろからヤミ金融を再開。中森、伊藤両容疑者は借金の返済が滞ると、借入先からヤミ金融に加わるように迫られ、針谷容疑者を紹介されたという。
針谷容疑者が統括するヤミ金融グループはホームページで「他社より低金利で喜ばれている」と集客。店舗を構えず、貸付金を直接顧客に送金し、元金や利息は他人名義の口座に振り込ませていたとみられる。
中森容疑者はその返済金を現金自動受払機(ATM)から引き出してコインロッカーに移していた。伊藤容疑者はそのロッカーから現金を取り出して針谷容疑者に運んでいたという。発覚を免れるために役割分担をしていた可能性がある。
4人の逮捕容疑は23年10月~24年2月ごろ、無登録で男女9人に計約180万円を貸し付け、法定金利の3・4~17・9倍の利息約68万円を得たとしている。針谷、中森両容疑者ら3人は容疑を認め、伊藤容疑者は「意味が分からない」と否認しているという。
旧五菱会系のヤミ金融が問題になった00年代初頭、「全国ヤミ金融対策会議」の代表幹事だった宇都宮健児弁護士(東京弁護士会)は「今も旧五菱会の流れをくむヤミ金融業者がいることに驚いた」と話す。
当時のヤミ金融グループの一部は特殊詐欺に移行したとみられる。針谷容疑者のグループが役割分担をしていた点について、宇都宮弁護士は「現金を引き出す『出し子』などと分担する特殊詐欺のノウハウがヤミ金融に逆輸入されている可能性もある」と指摘している。【加藤昌平】
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