総合スーパーから食品スーパーへ。

総菜全品の2割で工場を活用するという(編集部撮影)

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『週刊東洋経済』5月18日号の産業リポートは「イトーヨーカ堂 迷走の末の『分離』」。改革の成果が見えぬまま「IPO」を語る経営陣の真意とは。※本記事は2024年5月14日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。行ってわかった「ヨーカ堂」戦略地域でも閉店の訳

【配信スケジュール】5月13日(月)
赤字は8年で800億円超 「イトーヨーカ堂」の迷走
イトーヨーカ堂社長「IPOは分離ではなく独立だ」
<無料>「柏」「川越」戦略地域でも閉店強いられるヨーカ堂『週刊東洋経済 2024年5/18号(女性を伸ばす会社、潰す会社)[雑誌]』(東洋経済新報社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。定期購読の申し込みはこちら

リストラ後の「イトーヨーカドー」店舗数は93店。その9割が1都3県だ。事業も「食」への集中を進め、実質的に首都圏を地盤とする食品スーパーに生まれ変わる。

「食」集中へカギを握るのが、加工・調理を担うインフラの活用だ。

2月末に稼働した「ピースデリ千葉キッチン」。需要の高まる総菜の集中製造を行う。だしやソースから内製できるため、柔軟な商品開発が可能だ。すでに一部の肉総菜などが店頭に並んでおり、例えば空揚げの販売数は、旧商品の倍程度に増えた。

精肉など生鮮品の加工作業は千葉のほか、2023年に稼働した2つのキッチンでも行い、静岡を含む首都圏全域をカバーする。ピースデリの担当者によると「食品スーパー業界で最大級の生産規模」だという。

工場での集中調理で供給拡大

独自の総菜は高い利益率が見込める。ヨーカ堂は25年度の目標達成の手段の1つとして、総菜の売上高比率を、食品販売全体の15%に高めるとしている(22年度は13%)。

これまで総菜はインストア(店内調理)がほとんどだったため、商品供給が追いつかず、売り場を十分に広げることができなかった。対して、工場での集中調理なら、売れ筋商品を計画的に作ることができる。今後は店舗改装に合わせて、総菜売り場を順次拡大する計画だ。

子会社ピースデリ、「千葉キッチン」の様子(編集部撮影)

また店内作業に余裕ができるため、従業員は出来たて商品の調理に専念できる。

23年11月に開業したばかりの「ヨークフーズ中浦和店」では、だし巻き卵が人気だ。専用機材を導入、一品一品店内で焼き上げる。好調な販売を受け、今後ヨーカドー全店に導入を予定する。ほかに「具たっぷりおにぎり」や「若鶏の香草焼き」も、店内作業に余裕ができたからこそ可能になった商品だという。

旧倉庫活用でパン強化

ひそかに強化しているのが、ベーカリーだ。若年ファミリー層に人気の商材だが、店内焼成は投資と手間がかかる割に単価が低く、「ほとんどのスーパーで赤字」(競合大手)。ヨーカ堂も、テナントの誘致やメーカーへの製造委託で対応してきた。

今後はベーカリーの直営化を進める。ネットスーパーの拠点だった東京・西日暮里の倉庫をベーカリー用サテライトキッチンに改装中で、9月ごろの本格稼働を見込む。ここで集中製造したパンを当日中に周辺30店弱の売り場に並べる計画だ。

もっとも、競合のスーパーはこうしたインフラに十数年のスパンで投資を重ね、ノウハウを蓄積している。「周回遅れ」(山本哲也社長)のヨーカ堂はどこまで挽回できるか。

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