海の中を泳ぐのは『幻』と呼ばれる鯛。歴史的円安で多くの企業が打撃を受ける中、“起死回生の一手”と期待を寄せる企業があります。
■日本最大“模型の祭典”にも円安の影
(佐々木一真アナウンサー)「静岡で開催されているホビーショーにやってきました。ご覧のように大人や子どもなど多くの人で賑わっています」
今年62回目を迎えた「静岡ホビーショー」日本最大級の模型の展示会です。子どもたちが熱中していたのは、鉄道の模型。
「ブレーキする時間を考えないとオーバーラン」
Q.見てみてどう?
「カッコいい!楽しいです!」
歴史的な円安の中、ホビーショーを訪れた外国人は…
(ドバイから来たバイヤー)「円が安いと海外のバイヤーはたくさん買うきっかけになると思います。メーカーにも円安は最大のチャンスです」
(アメリカの模型制作者)「(円安は)とてもお買い得。値段が安いのに物が良い、必ず素晴らしい物が手に入ります」
今年は、例年に比べて外国人の来場者が増えたと言います。
(静岡模型教材協同組合長谷川勝人理事)「やっぱり円安の効果じゃないでしょうか。例えば、円が(1ドル)80円くらいの時に比べたら2分の1くらいの値段で買える訳です。そういったことで非常に買いやすいと思います」
一方で、日本の出展企業からは嘆き節が…長年、ホビー業界を牽引してきたタミヤの会長は、今の円安について…
(タミヤ田宮俊作会長兼社長)「我々模型業界は中小企業ですから影響しないはずがない。だから、いい加減に円安の傾向を止めてもらいたい」
海外から模型を輸入する会社は…
(プラッツ二神泰社長)「全世界のプラモデルメーカーの商品を日本に仕入れて売るという代理店業もやっていますので、そうすると円安の影響はかなりありますね。もう朝から晩までそれ(為替レート)に張り付いてではないですけれども、やっぱりそれは気になりますので…」
(佐々木一真アナウンサー)「こちらはハコスカと呼ばれた昭和の名車の実物です。その隣には32分の1スケールのプラモデルがあります。ボディーの形状など非常に精巧です」
こちらの会社では、工場の多くが中国など海外にあり、円安に対応するため、2年前から生産拠点を国内に戻し始めています。
(青島文化教材社青嶋大輔社長)「コスト面で今は正直、日本の方がちょっと安くなってしまっているような状況です。国内に戻すことによって納期の短縮ですとか、品質の部分ではチェックなんかも非常に効率よくできたりするものですから、色々そういった策を練ってこの状況を乗り越えていきたいなと思っています」
■円安対策起死回生の一手は“幻の千年鯛”
一方、円安をきっかけに海外に目を向けた業者も…千年に一度しか獲れないとも言われる、幻の魚“千年鯛”。1キロ1万円の値がつくこともある超高級魚。歯ごたえがあって、旨味もある、“幻の鯛”です。桜島を望む錦江湾でカンパチなどの養殖をしている和田さん。去年、その「千年鯛」の養殖を始めました。きっかけは…
(「康秀の勘八」三代目和田康志さん(35))「円安の影響でエサ代とか高騰しているので、カンパチの利益がとれなくなってきているのが現状です。それで千年鯛をやってみたということです」
燃料費や餌代の高騰に苦しむ中、起死回生の一手が「千年鯛」の養殖でした。
(和田康志さん)「今ここにいる千年鯛は去年導入した。今はまだ白黒模様で30センチくらい。少しずつ赤みが出てきて、来年出荷する頃には真っ赤な千年鯛になっている。海外の方を攻めたいという気持ちで千年鯛を入れた。中国・韓国・アメリカ、希少価値の高い魚なので海外にうけるんじゃないかと。中国・韓国なんかは赤い魚は結構売れるっていう話を聞いたんで、もしかしたらそっちで販路拡大できるんじゃないかと思っています」
しかし、千年鯛の養殖に成功した例はあるのでしょうか…
(和田康志さん)「今まで(養殖を)やった人がいないくらい、過去に例がないですね。データがない状態で始めています。毎回餌やりの時には考えながらやるしかないっていう…」
千年鯛の稚魚を3年かけて育て上げる、前人未到、手探りの挑戦です。
“千年鯛”の養殖を聞きつけた愛知県の業者から、早速、問い合わせが入りました。話を聞いてみると…
Q.千年鯛の味は?
(項明水産鈴木項太さん)「やっぱりおいしいですね。おいしいし旨味が非常にある魚なので、寿司店とか、料理店は千年鯛欲しい方みえるものですから。ただ水揚げ自体が少ないし、ものすごい値段がする時があるので、めったに送れる(供給できる)魚ではないんですけれども、養殖で天然よりも少し手頃に使えれば面白いのかなと…」
和田さん、千年鯛で世界を目指します。
(和田康志さん)「この円安を逆手にとって輸出メインになってくれる魚になればいいかなと思っています」
■「今がチャンス」円安“追い風”で7億円投資
こちらも円安が追い風に。雄大な北アルプスの山々に囲まれた、長野県安曇野市。
(藤屋わさび農園四代目望月啓市さん)「こちらがワサビの畑になります。中はこんな感じで。これ全部、湧き水でして、全体が見えているところがすべて水源地になっていまして、こう踏むと、こういう感じで―」
(ディレクター)「ブクブクと言っていますね」
このワサビが今、海外で大人気だと言います。
(望月啓市さん)「太くて長くてでかいワサビができているんですが、(収穫までに)全部2年かかっている」
「円安は輸出するとなれば結構良くてですね、今がチャンスですね」
7年前から海外への輸出を開始。取引先はアメリカやフランス、ドバイなど、世界14カ国に広がっています。
(望月啓市さん)「海外のお客さんは、金額に関しては何も言わずに、良いものを求めてくれるお客さんが結構多いので、国内で末端価格だと大体1本4000〜5000円くらい、海外では本当に一番高いところだと1本2万円とかで売買されているところがあります」
フランスのレストランでは、ワサビをオイル漬けにして、カレーの味付けにしたり、イワシのすり身と合わせて、ミートボールにしたり、創作料理の材料として使われていました。イギリスのレストランでは、“わさびのカクテル”が…ジンをベースに、おろしワサビを加え、その清涼感が魅力だといいます。
(望月啓市さん)「こちらが工場になります」
およそ7億円を投じて新工場を建設。海外輸出向けに、食品安全の国際規格も取得しました。
(望月啓市さん)「高くわさびも買ってもらって、そのお金で設備投資をして、持続可能な品質の良いワサビを常に(海外に)送れるように、うちは今チャンスと捉えてやっています」
5月12日『サンデーステーション』より
▶「サンデーステーション」公式ホームページ
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