不動産の相続が資産から負債へ…という時代がやってきています。そんな中で新たなサービスも始まっています。

 5月7日、大阪府堺市が解体作業に乗り出したのは、堺市北区にある木造2階建て住宅。屋根や外壁の一部が崩落して倒壊のおそれもあることから行政代執行に踏み切りました。登記簿上の所有者はすでに死亡していて、市の調査でも相続人を把握することができなかったということです。

 全国的に増え続けて深刻化している空き家問題。先週、総務省が発表した全国の空き家の数は、なんと過去最多の900万戸に上ります。空き家が増え続ける背景の一つが少子高齢化です。

 大分県中津市にある住宅は築100年。97歳の女性が1人で暮らしていましたが、3年前から施設に入所して、現在は空き家となっています。別の場所に住む70代の息子は次のように話します。

 (近くに住む息子)「まだおふくろがおるから(解体したら)おふくろが寂しいだろう」

 思い入れのある家を取り壊すのは重い決断が必要です。街の人にも話を聞きました。

 「解体費とかもありますし、潰すというのは勇気がいるというか寂しいなって思う」
 「子どもたちに売って処分できたらと思っています」
 「売るとか解体費とかも考えて貯金するとか。両親とは話をしていないですけど、常にどうしようかなと考えています」

 所有者も子ども世代も年老いていく中で新たなサービスも始まっています。

 三重県鳥羽市。人口770人程の小さな港町にひっそりと佇む宿があります。ここは元々は築100年の空き家でしたがリノベーションを施して生まれ変わりました。

 (旅館なおみ 森大地さん)「ここの照明は間接照明。砂利の奥に間接照明を忍ばせて、下から照らすようにして、和モダンみたいな感じです」

 ただこの宿、少し変わっていることが。それは元々の空き家の“値段”です。

 (森大地さん)「(Qこの物件はいくらで入手した?)これは0円ですね。タダです」

 使ったのは空き家を0円で譲りたい人と欲しい人とを結ぶマッチングサイト『みんなの0円物件』。全国各地の0円物件が掲載されていて、これまでに1000件近くがマッチングに成功したといいます。運営する中村領さんに山中真アナウンサー話を聞きました。

 (山中アナ)「空き家問題に困っていての依頼はどれぐらい?」
 (中村さん)「最近は指数関数的に増えていまして直近1年間で600件ほど。基本的にはすべて無償お渡しなので」
 (山中アナ)「実際にマッチングに至った数はどれくらい?」
 (中村さん)「掲載した物件のうち8割ほどは譲り手が見つかっています」

 自身も亡くなった祖父母の家を相続した経験があるという中村さん。相続した建物の見積もりを取ると、土地の売却額が50万円だったのに対して、解体などの費用が320万円で大赤字。困った中村さんでしたが、運よく譲り受けたいという知人を見つけ、無償で譲渡。その空き家は現在改築されてジュース店になっています。

 (COOZY JUICE STAND 畠尾司さん)「自分の中で家賃はこれくらいかかってという経費の計上をした上で予算を立てていたんですけれど、それがなくなると考えると当然0円はうれしい」
 (中村さん)「僕にとってもありがたいんですよ。僕はもう管理できないから」

 社会問題化する空き家について専門家は?

 (一般社団法人・空き家再生協会 菊池聖雄さん)「空き家市場は3つに分かれています。空き家になった段階で適切な対応をしていれば適切な金額で売れたであろうもの。もしくは引き継いだ段階で、エリアや建物が悪いということで、ほぼ無価値なもの。あとは完全にマイナスなものですね」
 (山中アナ)「無価値の空き家ができてしまうのはなぜですか?」
 (菊池さん)「建物の維持管理状態が悪くて、修繕に非常に多額の費用を見込まなくてはいけない。エリアによっては土地の価値がそんなにない。不動産をそのまま放置しておくのではなくて、次の人に適切につなぐことに意識を向けなくてはいけない時代になってきたかなと思います」

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