円安の影響もあり増加している外国人観光客。そのニーズに合わせて、おもてなしの形が変わりつつある観光地があります。

【大野雄斗記者リポート】「GWの城崎温泉です。平日なんですが、浴衣を着ている人や写真を撮っている人など、多くの人でにぎわっています」

兵庫県豊岡市の城崎温泉。温泉街にある7つの「外湯」めぐりが人気です。

実は城崎温泉を訪れる外国人観光客の数は近年、急激に増加。豊岡市によると13年前と比べて外国人の宿泊客の数は約55倍に増えているのです。

【オーストラリアからの観光客】「オーストラリアのメルボルンから来ました。温泉が好きなので、ここに来て入ってみたいと思いました」

【オーストラリアからの観光客】「僕にはタトゥーが入っているんだけど、ここでは気にしなくていいってお勧めされました」

■外国人観光客のニーズに合わせ「泊食分離」進む

そんな人気観光地で今起きている変化が…
【城崎温泉観光協会 高宮浩之会長】「15年、20年くらい前までは、(旅館は)ほとんど1泊2食付きだけだった。それがだんだんいわゆる『泊食分離』みたいなことになって」

宿は素泊まりで、ご飯は飲食店など外で済ませる「泊食分離」。食費を抑えて、安く泊まりたい外国人観光客のニーズに合っているといいます。

ことし3月にオープンした「ホステルわらく」。
【HOSTELわらく 椿野陽一郎さん】「こちらが、お客様が自由に出入りできるキッチンとダイニングスペースです」

ここでは食事の提供は一切なく、宿泊プランは「素泊まり」のみで、部屋もシンプルな作りです。

城崎温泉観光協会によると、加盟している80の宿泊施設のうち、約10施設が素泊まり専門で、少しずつ増えているといいます。

【HOSTELわらく 椿野陽一郎さん】「あまり宿泊にお金をかけずにいろんなことをしたいっていう方もいると思うので。お部屋ではもう寝るだけ、あとはもう外で楽しんでくださいっていう、城崎の新しい滞在の仕方っていうものが提供できないかな」

実際に街できいてみると…
【フランスからの観光客】「食事は予約していません」

【オランダからの観光客】「外に出てめぐる方がいいわ。ある日は寿司がいいかもしれないし、ある日はカルボナーラがいいかもしれないし、また他の日は他の物が食べたくなるかもしれないし」

コンビニで食事を済ます外国人観光客も多いようです。

【ロシアからの観光客】「いっぱいコンビニで買ってきたよ。おいしくてこれで十分だよ」

話を聞いた16人のうち12人が「素泊まり」と、やはり需要は高いようです。

こちらのレストランは利用客の9割が外国人になることもあると言います。

【グビガブ 小田垣順司さん】「日本に来て和食に飽きた方、ピザやパスタなどを求めてくる方も多いです。以前よりも夜のお客さんが増えてありがたく思っています」

レストランで食事をしていたイスラエルの男性は…

【イスラエルからの観光客】(Qホテルでは食べない?)「ベジタリアンなので、野菜とチーズと卵、とてもおいしいです」

食事を終えた後は、旅の目的・外湯巡りに。

【イスラエルからの観光客】「きょうは3回入浴した。城崎はとてもきれいです。特別な雰囲気があります」

時間に縛られず、自由に温泉街を楽しめるのも素泊まりのいいところです。

■旅館にとっても人手不足や働き方改革の問題解消に

一方、食事がなくなる分、宿泊の単価が下がるので旅館にとっては厳しい状況かと思いきや、そうではないようです。

1958年創業の老舗旅館「赤石屋」。ことし7月にリニューアルオープンを迎えますが、「夕食の提供」をやめることにしました。

【赤石屋 今津一也代表取締役】「人手不足や働き方改革の問題で、改善していかないと考えた結果がこうなった。食事をしないとなると、サービスのスタッフや板前(の働き方)がずいぶん改善される」

働き手の高齢化などが進む旅館業界。人手不足の問題を解決できると言います。

観光客と旅館どちらのニーズにもあった「泊食分離」。観光協会によると今のところ観光客が飲食店に入れない状況はありませんが、今後、素泊まり需要がさらに高まった場合に備えて飲食店を充実させる必要があります。

【城崎温泉観光協会 高宮浩之会長】「お客さまの要望の変化とか、いろんな事に合わせながら、温泉街も変わっていきたいなと思います」

多様化する旅行スタイルにあわせて、温泉街のおもてなしの形も変わりつつあります。

■変化することで外国人観光客の心をつかんだ「城崎温泉」

城崎温泉はニーズに合わせて変化しているようです。

【関西テレビ 神崎報道デスク】「タトゥーを外湯でOKにしたり、素泊まりOKにして、受け入れ態勢を整えると、ちゃんと人がついてくるというところもあります。城崎はやはり浴衣を着ていたり、街の雰囲気・歴史もあり、外国人がそのような所を好む傾向にあるので、受け入れ態勢を整えたら、大阪や京都から時間かかってでも来てくれるということが、城崎の成功例で分かると思います」

旅のスタイルが変化していますので、選択肢が増えるのはいいことなのではないでしょうか。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年5月3日放送)

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