近年働く女性が増えているのがタクシー業界だ。タクシーは男性ドライバーが多い印象があったが、変化が起きている。
全国の女性タクシードライバーの人数の推移。
この10年間ほど増加傾向が続いていて、2024年の人数は1万1213人で2023年から1500人以上増えている。割合で見てみると、2012年は2.3%だったが、2024年は4.8%。この10年で2倍以上になっている。
福島県でもこうした傾向が出ている。背景に何があるのか。実際にタクシードライバーに転職した女性の仕事を取材した。
「きょうも一日よろしくお願いします」「いってきます」「いってらっしゃい」
福島市のタクシー会社に勤務する本田りえさん。
これまでバスガイドやスポーツインストラクターの仕事をしてきたが、2024年の4月からタクシーの運転手に転職した。
本田さんは「元々お話するのとか接客業が好きなので、皆さんとお話する中で福島のことを知っていただいたりすることが多かったので、とても楽しく仕事をしています」と話す。
本田さんをはじめドライバーの給与は全員が歩合制。本田さんは基本的に午前7時から勤務しているが、家庭の用事を優先させることもでき、働く時間は裁量に任されている。「自分でも時間帯とか働きやすい時間を優遇していただいているので(自分の意思を)尊重していただいているので、その面でも女性が働きやすいんじゃないかなと思います」と本田さんは話す。
「家庭と仕事の両立のしやすさ」がタクシードライバーの魅力の一つ。
本田さんが働く大和タクシーでは、2024年に女性ドライバーが4人増え、7人になった。県内全体を見ても、女性ドライバーは2023年よりも15人多くなっていて、186人は過去最多だ。家事や子育てなどを抱える女性に、働きやすさが認知されてきたことが要因と見られている。
大和自動車交通タクシー事業部業務課長の高野英明さんは「(タクシードライバーは)男性の仕事というイメージが非常に高かったんですけども、そういうのを払拭してくれて、もう男性女性関係なく、どんどん入ってきてもらって業界全体をもっと盛り上げていけたらいいなというのはあります」という。
未経験からタクシードライバーになり7ヵ月あまりが経った本田さん。
当初は地理に不慣れなため不安もあったたが、タブレット端末の導入などのサポートもあり、スムーズに仕事をこなすことができている。丁寧で細かいところまで気配りができる接客は利用者からも好評だ。
乗車した高齢者は「元気できれいな声ですごくいいよ」と話す。
本田さんは「女性の気の利くところとか、運転しててもなんかこう安全だったりとか、安心っていう風に言っていただいているので、女性がドライバーになっても安心して働きやすいなって思ってます」と話す。
ドライバーの時間外労働に上限が設けられることで人手不足が生じる、いわゆる「2024年問題」を抱えるタクシー業界。女性ドライバーの増加が課題の解決だけでなく、業界のイメージアップにつながるかもしれない。
「安心して現地に迎える、あなただったからここに呼んでよかったなとかそうやって言っていただけるようなドライビングドライバーを今後も目指していきたいと思います」と本田さんは話した。
<記者解説>
ライフスタイルに合わせて生き生きと働いているように見えた。利用客の方と話しているときの笑顔が印象的だった。
大和タクシーで働く子育て中の女性ドライバーの方にもお話を伺ったが、やはり勤務時間の融通が利くという点で「気兼ねなく働ける」「給与収入の調整がしやすい」といった声が聞かれた。
また、国もタクシードライバーの人材不足解消に向けて、女性の採用などを後押ししている。(女性ドライバー応援企業:全国855の事業者が認定・2024年10月時点)
福島県内では2つの事業者が認定を受けていて、須賀川市の企業では、ドライバーが必要になる普通二種免許の取得費を会社が全額負担、小回りが利く車を採用するなどの取り組みを行っている。
また、いわき市の企業は、免許の取得費の全額負担や月に1回、女性向けの会社説明会を行うなど女性の雇用を促進しているということだ。
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