(ブルームバーグ):日本製鉄によるUSスチール買収計画を巡り、買収成立ならUSスチールのデービッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は7200万ドル(約105億8000万円)相当に上るパッケージを受け取る可能性があると、米民主党の有力上院議員2人が批判した。
ブリットCEOを含むUSスチール幹部に提示された買収成立に伴うインセンティブに関して、ウォーレン(マサチューセッツ州)、ブラウン(オハイオ州)両議員は3日、ブリット氏宛てに書簡を記した。
今年3月の米証券取引委員会(SEC)への届け出によれば、USスチール幹部は日鉄が買収した後で解雇された場合、インセンティブの対象となる。
ウォーレン、ブラウン両氏は同書簡で、「この取引にはリスクが伴う。それにもかかわらず、このインセンティブがどれほどのけん引力となって取引を推し進めているのか」を懸念していると述べ、これが米企業ではなく日鉄の買収案受け入れへとブリット氏を動かした可能性があると示唆した。書簡のコピーをブルームバーグは確認した。
両議員は「このような支払いはUSスチール幹部が同社の労働者を犠牲にして私腹を肥やし得るという、忌まわしい利益相反を示している」と主張した。
USスチールは書簡を受け取ったことを認め、このような報奨金はいかなる買収でも発生すると指摘。「当社は多くの不正確な記述や事実誤認を正すとともに、最も強力な提携相手の1社による巨額の投資が米国内の鉄鋼生産を強化し、組合員数千人の雇用を今後何年にもわたり約束するものであるということについて、事実に基づく情報を提供する予定だ」と発表文で説明した。
バイデン大統領とハリス副大統領、共和党の大統領候補であるトランプ前大統領はいずれも日鉄による買収に反対の姿勢だ。USスチール株価は日鉄が提示した1株当たり55ドルのおよそ3分の2程度で推移しており、投資家は買収成立の公算が小さいとみていることを示唆する。
SECへの届け出によれば、ブリット氏に提示されたインセンティブは1300万ドルの現金と約5400万ドル相当の株式などだ。ウォーレン、ブラウン両氏はブリット氏に対し、このインセンティブがまだ有効で、受け入れる意向なのかを質問。別の買収提案でも同額の支払いを受け取ることになっていたのかについても、回答を求めている。
USスチールの発表文によると、ブリット氏はどの企業による買収でも報奨金を受け取ることになっていたとされるが、その額が同じかは明らかにしていない。
両議員は書簡で、USスチールは売却を急ぐ必要はないと強調し、最初の買収案を提示された際に同社は「経営難に陥っていたわけではなかった」と論じた。
原題:US Steel CEO Pressed by Senators to Defend Nippon Steel Payout(抜粋)
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