北陸新幹線が福井県内に延伸し、新幹線が県内の新しい駅に到着し多くの乗客が降りてきた時は、盛り上がりが最高潮に達しました。あれから半年たった16日、福井駅では県民からこんな声が聞かれました。
 
<県民の声>          
「東京に旅行するときに新幹線乗りました。乗り心地が良くて速かった」
「仕事で関西に行くことが多いが、そちらは不便になったことは残念」
「国道を走っていて新幹線が見えるとテンションが上がる」
「(駅周辺に)人がちらほらいる。増えてはいるけど想像よりは少ない」
「新幹線はすごく速くてびっくりした」
「駅周辺の人の多さも変わったと思うし、飲食店もいろいろあるので立ちよりやすい。若者が寄れる楽しみがある。県外の人と会うとなると駅で会うことが増えた」
 
北陸新幹線開業から半年。県内への開業効果は続いているのか、また、その裏で見えてきた課題は何なのか、取材しました。
        
3月16日、福井県に待望の北陸新幹線が開業しました。県民からは「ドキドキとワクワクが止まらない!」などと歓声が上がり、県内はこれまでにない賑わいと熱気に包まれました。
  
あれから半年。開業当初の賑わいは落ち着きを取り戻したものの、開業半年たった16日も、福井駅には多くの観光客が訪れていました。
 
観光客からは「神奈川県から来た。芦原温泉が2回目だけど良かった。北陸新幹線だと乗り換えがなくて楽」「長野県から来た。北陸新幹線ができて行きやすくなった」などと、開業を歓迎する声が上がっています。
  
県の推計によりますと、2024年3月の開業から8月までに、あわら温泉、福井、敦賀の新幹線駅周辺を訪れた人の数は合わせて約294万人。前年の同じ時期と比べると23%増えています。
 
地域別にみると、関東圏からは42%増、信越圏は76%増と大きく伸びています。特に、終着駅の敦賀では駅周辺の利用者数が19万人と、前年度の同じ時期と比べ68%アップ、敦賀赤レンガ倉庫は48%アップと、多くの人が訪れていることが分かります。
  
数字で見ると、多くの人が福井にやってきて開業効果は県内に波及しているかのように思えます。
  
その一方で、こんな地域も。
 
鯖江市で江戸時代から続く老舗和菓子店「大黒屋」の小石川浩司さんは「県外の観光客を見かけない。恩恵はない」と話します。「以前はコンサートになると、県外から来たお客さんが昼前から歩いていて、買い物をしてお昼どこか食べることない?と聞かれることもあったが、最近はなくなった」
  
鯖江駅は北陸新幹線の県内開業に伴い、これまで停まっていた特急が廃止されました。近くにあるサンドーム福井でコンサートが行われるときは商店街を県外客が歩く姿が見られ、お土産などを買っていくこともあったといいます。
   
また、鯖江市の精肉店「ミート&デリカささき」の佐々木隆幸社長は「明らかに県外からのお客さんは減った」と人流の変化が売り上げにも影響を与えていると話します。
   
この店では、ソースカツ丼を食べ歩きできるようにした「サバエドック」が人気で、休日になると県外客が多く訪れていたといいます。佐々木さんは「来店してもらっての売り上げもあるのでその分が減った」と嘆きます。
   
新幹線駅から離れた地域や、敦賀以西の新幹線がまだ開通していない嶺南など、開業効果が波及していない地域もあり、人流に濃淡が出ています。
 
「鯖江は取り残されてるというか、福井や敦賀が盛り上がっていると余計そう感じる。少し駅から距離があるのでこっちの方まで回ってもらえる仕組みなども作ってもらえたら」と佐々木さんは話します。
   
北陸新幹線の県内開業から半年。観光客が一気に増え、開業効果を実感する場所がある一方で、その効果が一部に留まっているという課題もみえています。県内の新幹線効果が一過性で終わらないために、人流を広域に波及させる施策が急がれます。
        
福井県では、人流を県内に広くいきわたらせるために支援を検討しています。新幹線効果が波及していない商店街を対象に、中長期的な復興計画の策定や消費喚起のイベント、割引クーポン発行事業など、9月の補正予算で1億2100万円を計上し9月議会で可決される見込みです。
  
一方で、鯖江市の老舗和菓子店の小石川さんは「イベントで人が来ても、一時的になってしまう。『これ』を目当てに店に来たという店舗ごとの強みを作っていかないといけない」と課題を話します。
    
行政の支援だけでなく、リピーターを呼び込める各店舗の魅力づくりも欠かせないようです。        

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。