(ブルームバーグ):日本株市場が米国景気の先行き懸念や為替の円高などで大きく揺れる中、国内小売り最大手のイオンは同業への海外企業の買収提案をきっかけに割安な株価を見直す動きが強まり、最高値を更新している。

イオン店舗(千葉県)

イオン株は世界の金融市場が急変した8月5日を安値に戻り基調となり、カナダのコンビニエンスストア大手がセブン&アイ・ホールディングスに買収を提案したことが明らかになった19日以降、上げに拍車がかかった。同日から9月10日までの株価上昇率は、小売株の時価総額上位5社中、7&iHD、円高メリット株として最も知られているニトリホールディングスに次ぐ3位。6日には3987円と上場来高値を付けた。

7&iHD、クシュタールの提案は議論を行うための根拠・材料なし

日本の小売株は、昨年来の持続的な物価高や為替市場の歴史的な円安進行で消費の停滞が懸念され、年初から7月までの東証小売業指数は8.5%高と、東証株価指数(TOPIX)の18%高を下回っていた。しかし、足元では円安が一服して輸入コスト増への警戒が和らいだほか、業界再編期待を材料に8月以降の小売業指数は33業種の上昇率でトップとなっている。

大和証券の細井秀司シニアストラテジストは「イオン株の上昇は内需関連株物色が強まった時期と同じだ」とした上で、スーパー業界の合併・買収(M&A)で残存者メリットも受けるイオンには魅力があるとし、7&iHD買収の話が「株高の『号砲』となった」と語る。

細井氏は、日本の大手小売りの株価純資産倍率(PBR)は米国などに比べて低いと指摘。近年の円安もあって、国内スーパーで7&iHDとともに2大グループを形成するイオンについても「日本展開する際の時間を買いたい欧米の経営者には割安に見える」と言う。ブルームバーグ・データによると、7&iHDのPBRは1.5倍、イオンは3.2倍。一方、米S&P500種株価指数は4.8倍、米ウォルマートは7.5倍だ。

7&iHDへの買収提案によって、小売りに限らず経営者は海外から突然の買収提案を受けるリスクを理解したとSOMPOアセットマネジメントの田中英太郎シニア・インベストメント・マネジャーは話す。オーナー系のイオンは「コーポレートガバナンス(企業統治)を含めて特殊な経営。危機感を持って経営しなければならなくなっている」との見方も同氏は示した。

イオン広報グループの佐藤宏一氏は、現状、同社の経営方針について株主の理解を得ているとし、「売り場やサービスなどの経営にも株主の声を生かしており、これを継続することが重要と考えている」とコメントした。

--取材協力:香月夏子.

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