(ブルームバーグ):中国で2日に1人の割合でビリオネアが誕生していた活況の時代、銀行業界のレインメーカー(花形バンカー)だった投資銀行、華興資本の包凡前会長は、自身もその節目にあと少しで到達するところだった。

アリババグループなど大手テクノロジー企業への助言で手腕を発揮した包氏は、中国で最も引く手あまたバンカーの一人となり、華興資本の株式保有を通じて8億ドル(約1145億円)余りの資産を築いた。

しかし、包氏のキャリアは昨年に崩壊した。中国当局の締め付け拡大の中で身柄を拘束された同氏は、表舞台から姿を消した。9日に1年5カ月ぶりに取引を再開した華興資本の株価は急落し、同氏の資産急減の大きさが明らかになった。当局への届け出やブルームバーグ・ビリオネア指数の算定によると、同氏の持ち株の価値は現在5500万ドルと、2021年2月のピークから93%目減り。同氏は2つの持ち株会社と信託を通じて同社株約35%を直接保有している。

ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、華興資本の広報担当者はすぐにコメントしていない。

中国の金融セクターは、習近平国家主席が掲げる格差是正を目的とした「共同富裕」のスローガンの度重なる標的となっており、包氏の突然の失墜は同業界に暗雲を投げかけた。2023年だけでも100人余りの金融機関の幹部や関係者がこの反腐敗の動きに巻き込まれる一方で、バンカーは報酬カットや、当局が「享楽主義的」とみなすライフスタイル抑制のための倹約を強いられている。

ナティクシスのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏は「これらの金融セクターのスター(一部はスターではないが)が拘束された理由を巡る透明性の欠如は、中国への資金流入復活の助けにならない」と指摘した。

原題:Vanished Banker Loses $750 Million in China’s Unending Crackdown(抜粋)

--取材協力:Pei Yi Mak、Cathy Chan、Lulu Yilun Chen.

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