(ブルームバーグ):10日の日本市場は株式相場が続落。為替の円高一服や前日の米国株高を受けて高く推移する場面が目立ったが、米国の重要日程を前に積極的な買いは手控えられた。円相場は1ドル=143円台前半で方向感を欠く展開。債券は先物が小幅に上昇した。
来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅が目先の焦点となる中、あす11日に8月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控えて市場参加者は身動きを取りにくくなっている。前週末の米雇用統計の発表後、金利スワップ市場で大幅利下げの確率は低下したものの、利下げが遅れて景気後退リスクを高めることへの懸念も根強い。
大和証券の谷栄一郎チーフストラテジストはリポートで、9月は25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と50bpのどちらの利下げが正解か分からない状況だと説明。物価の沈静化で注目度がやや低下していた米CPIが、今回は一転して利下げ幅を占う重要指標になったと指摘した。
株式
東京株式相場はTOPIXが2023年10月以来の5日続落で終えた。円相場の方向感が定まらず、投資家心理の重しとなった。自動車や機械の一角に売りが出た。
楽天投信投資顧問第二運用部の平川康彦部長は、円安の追い風を受けた銘柄を買う流れが反転していると話す。物色の対象が食品セクターなど業績や株価の変動が比較的小さい銘柄にシフトしていると述べた。
第一三共株が8.6%下げてTOPIXを最も押し下げた。同社は英アストラゼネカと共同で開発中の肺がん治療候補薬の臨床試験結果が悪材料視され、約1カ月ぶりの下落率で取引を終えた。指数を構成する2132銘柄のうち上昇が1038、下落が1001だった。
個別ではジェフリーズ証券による格下げを受けてコーセー株も下落。 筆記具のパイロットコーポレーション株は野村証券が投資判断を新規に「買い」とし、反発した。
東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、来週に日米で金融政策決定を控えて本格的なリバウンド局面に入るのはまだ先だろうと指摘。株価は当面神経質な展開で落ち着かないのではないかとみていた。
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=143円台前半で明確な方向感なく推移した。9月の米大幅利下げ観測が後退しドルを下支えする半面、米国の大統領選討論会やCPI待ちの雰囲気も強い。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、来週のFOMCに向けた重要な材料だった雇用統計が決め手に欠け、相場は「どちらにも動きづらい展開」と指摘。「米国では大統領選挙のテレビ討論会、8月のCPI。国内では日本銀行の中川順子審議委員と田村直樹審議委員の講演を控える中、様子見になっている」と述べた。
米国では10日夜(日本時間11日午前)に民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領が初めて顔を合わせる大統領選候補者のテレビ討論会が開かれる。11日に発表される8月米CPIは前年同月比で2.5%上昇と7月(2.9%上昇)から伸びが鈍化する見通しだ。
ソニーフィナンシャルグループの石川久美子シニアアナリストはテレビ討論会に関し、このところ両候補の政策が近くなっており、「どちらが大統領になってもインフレ圧力がかかりそうな政策内容だ」と指摘。討論会自体は「注目されているので手掛かり材料になる可能性はあるものの、ドル・円の方向感をつけるものにはならないのではないか」と話した。
債券
債券相場は先物が小幅高。夜間取引での上昇を受けて買いが先行した。その後は伸び悩み、下げに転じる場面もあった。5年国債入札は無難な結果だった。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは5年国債入札の結果について、「テール(落札価格の最低と平均の差)は前回より強く、総じて無難な結果だ」と評価。予想通りの結果を受けて相場の反応は限定的だとした上で、12日にタカ派とされる日銀の田村審議委員の講演を控えていることから「徐々に売りが優勢になるのではないか」と述べた。
入札結果によると、最低落札価格は99円88銭と市場予想と一致した。小さいと好調を示すテールは2銭と、前回の5銭から縮小した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.76倍と、前回3.51倍から上昇した。
日本債券:5年利付国債の過去の入札結果(表)
新発国債利回り(午後3時時点)
--取材協力:船曳三郎、長谷川敏郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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