(ブルームバーグ):市場の注目を集めた8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を下回り、6、7月分も下方修正された。予想される米金融当局の利下げがどの程度の幅になるかを巡って、議論が活発になりそうだ。

雇用統計に関する市場関係者の見方は以下の通り。

◎ モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏:

雇用者数の伸びが市場予想を下回ったことで9月の50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げを後押しするかもしれないが、まだ決まったわけではない。慎重な米金融当局にとっては、今のところ25bp利下げが基本シナリオであることに変わりはない。一方で、過度な景気冷え込みを示唆する他の経済データに対して市場は敏感に反応するだろう。

◎ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのウィン・シン氏:

今週は製造業と非製造業での価格指数上昇などインフレ面で一部に上振れサプライズがあり、雇用統計でも平均時給の伸びが加速した。来週の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)は脇役のような扱いになっていたが、9月の利下げ幅が25bpになるか50bpになるかを決める要因になるかもしれない。

◎トレードステーションのデービッド・ラッセル氏:

米金融当局にハト派姿勢を強めさせるほどに軟調ではあったが、リセッション(景気後退)懸念を裏付けるほど弱くはなかった。雇用市場は曲がりつつあるが、壊れてはいない。ソフトランディングへの軌道は維持されているようだ。

◎プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏:

今回の雇用統計は残念ながら、リセッションに関する議論を完全に解決する内容ではなかった。米金融当局にとっては、50bpの利下げでインフレ圧力を再燃させるリスクと、25bpの利下げで景気後退を招くリスクのどちらが大きいかを判断することになる。

◎インディペンデント・アドバイザー・アライアンスのクリス・ザカレリ氏:

データを見る限り、米金融当局が慌てて大幅利下げに踏み切る必要はなさそうだ。予想よりは弱かったものの、崖から落ちるような数字ではなかったことから、50bpの利下げは必要なさそうだ。米金融当局は年内、25bpずつの利下げという慎重なペースで進むだろう。

◎パシフィック・インベストメント・マネジメントのティファニー・ワイルディング氏:

総じて今回の雇用統計は、経済は減速しているが急激に悪化してはいないという状況と極めて整合している。米連邦公開市場委員会(FOMC)にとってどのような意味を持つかだが、9月に25bpで利下げサイクルを開始する可能性が非常に高いとわれわれはなお考えている。9月の利下げ幅にかかわらず、FOMC当局者は最新の予測を通じて従来の想定よりずっと速いペース、恐らく2025年末までに、政策をより正常な水準へと戻す計画であることを示唆するだろう。

◎ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのフロリアン・イエルポ氏:

雇用統計は9月の50bp利下げを必ずしも正当化する内容ではない。それほどの切迫性はまだなく、米金融当局は9月のFOMC声明をハト派な内容にすることで多くのことが達成できる。市場は「想定ほど悪くはないが、そこまで良くもない」というテーマにしばらく耐える必要があるだろう。

◎グレンミードのジェーソン・プライド氏:

現時点で労働市場の底が抜けたわけではないが、FOMCが今月の会合で50bp利下げに踏み切るほどの緊張感がある。FOMCが利下げを実施するかどうかがではなく、どの程度積極的に行うかが問題になるだろう。しかし、最終的に最も重要になる可能性があるのは、金利の長期的な軌道だ。FOMC参加者が示す金利予測分布図(ドットプロット)が次回会合で最も注目される材料となるだろう。ドットプロットでは、2025年末にフェデラルファンド(FF)金利が中立水準近辺になる軌道が描かれる可能性が高い。

◎エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏:

8月の雇用統計はグレーゾーンの要素が強いが、FOMCが9月に50bpの利下げを実施するほど弱くはないかもしれない、というのがわれわれの最初の印象だ。このデータにより、当局は50bpの利下げに踏み切るべきだとわれわれは考えるが、FOMCは慣性的であり、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長としては50bpの利下げに動くには不十分で、ハト派寄りの25bpに落ち着く可能性がある。

◎プレミア・ミトン・インベスターズのニール・ビレル氏:

1カ月前に市場を揺らした数字が再び予想を下回った。しかし、良いニュースもある。時給が予想を上回る伸びとなり、インフレ率を上回った。議論は9月の利下げ幅が25bpになるか50bpになるかに移っているが、今回のデータは大幅利下げを促すには十分ではないだろう。9月FOMC会合前に発表されるCPIが鍵になる。

◎LPLファイナンシャルのジェフリー・ローチ氏:

労働市場は緩やかなペースで減速している。雇用統計の発表直後、市場では次回のFOMC会合での50bp利下げを織り込む確率が前日より若干高まった。だがわれわれとしては25bp利下げの可能性が高く、FOMCはより積極的に動く権利を年内最後の2回の会合に残しておくとみている。

原題:Bond Traders Boost Fed-Cut Bets After Jobs Data: Markets Wrap、Dollar Turns to Gains in Aftermath of US Jobs Data: Inside G-10

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