(ブルームバーグ):米鉄鋼大手USスチールは、日本製鉄による141億ドル(約2兆円)の買収が不成立となれば解体、売却される可能性がある。米国の代表的企業の一つであるUSスチールへの買収計画の紆余(うよ)曲折を見たアナリストらはこう受け止めている。

日鉄による買収は対米外国投資委員会(CFIUS)の審査対象となっており、バイデン米大統領はCFIUSの決定が自身に伝えられ次第、阻止する計画だとブルームバーグは今週報じた。

取引の行方はまだ不透明だ。今週これまでの時点でCFIUSはこの件をバイデン大統領に報告していない。バイデン氏はかねて、USスチールが米国国内で所有・運営されるべきだと公言しており、阻止する考えだと言われているが、ホワイトハウスは阻止を公に表明してはおらず、時期も示していない。日本の政府高官は、問題が解決されることを期待していると語っている。

アナリストによれば、仮に取引が阻止された場合、USスチールは売却プロセスを再開せざるを得なくなる。今回は会社全体の買収をいとわない企業がいるとしても、それが誰なのかは分からないという。

CRUグループのプリンシパル鉄鋼アナリスト、ジョシュ・スポアーズ氏「現在のような状況でUSスチール全体を買収する鉄鋼企業がいるとは考えにくい。入札者によって分割されることになるかもしれない」と指摘。USスチールの資産に対して入札するのは、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社や他の国内鉄鋼メーカーなど多岐にわたる可能性があると付け加えた。

USスチールがアーカンソー州に持つ、「ビッグ・リバー・スチール」として知られる最先端の電炉ミニミルは、間違いなく最も価値のある資産だ。キーバンク・キャピタル・マーケッツのアナリスト、フィリップ・ギブズ氏によれば、公害の少ない製造工程に積極的に投資しているニューコアやスチール・ダイナミクスなど米鉄鋼メーカーが、同工場の買い手になる可能性があるという。

ニューコアとスチール・ダイナミクスは、ブルームバーグによるコメントの要請にすぐには返答しなかった。

一方、組合が運営する伝統的な高炉施設は、売却の見通しを悪化させるUSスチールの最近のコメントからみて、魅力に乏しい可能性がある。デービッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は4日、日鉄との取引が不成立なら、同社は高炉設備から大きくシフトするだろうと述べた。

ギブズ氏は「今後5年から10年間、競争力を維持するため高炉資産への投資が必要であることを、彼らは事実上認めている。こうした資産の買い手は何らかの取引をすることになるだろう」と予想した。

USスチールは日鉄との取引が頓挫した場合の代替案についてそれ以上のコメントを出さなかった。日鉄のコメントは得られていない。

原題:US Steel Assets Face Chopping Block Without Japan Deal (1)(抜粋)

--取材協力:Josh Wingrove.

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