(ブルームバーグ):6日の日本市場では円相場が上昇。注目度の高い米国の雇用統計の発表を控え、労働環境の悪化や米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利下げへの警戒感から円買い・ドル売りが優勢だ。

円相場が1ドル=143円台前半から142円台後半へ強含む中、株式相場は電機や機械など輸出関連株を中心に下落。債券相場は日本銀行の国債買い入れオペの結果を受け、先物や長期債が買われた。

6日に発表される8月の米雇用統計は今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で見込まれる利下げの幅を決定づける可能性があり、市場の注目度はいつも以上に高い。前回は失業率が予想外に悪化するなど米景気の失速リスクに警戒感が強まり、金融市場が不安定化。7月末に日銀が利上げを行ったことも重なり、急激な円高や歴史的な日本株急落を招いた。トレーダーは新たな波乱のリスクに身構えている。

野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストはリポートで、ドル安・円高傾向の明確な一巡には米雇用統計で景気後退懸念が一掃されるほどの「ポジティブサプライズが必要」になるだろうと指摘。「年内140円割れの円高リスクを測る上で、米雇用統計は極めて重要」としている。

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為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=142円台後半に上昇。米国で弱い雇用関連指標が相次ぐ中、9月の米大幅利下げ観測がくすぶっていることが円を支えている。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、ADP雇用指数や求人件数が悪かったので米雇用統計に対する市場の目線はやや下がっている可能性があると指摘。同統計が悪い結果となった方が市場の反応は大きくなりそうだと話す。

ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、日経平均が一時200円を超す下げとなり、リスク回避で円が買われたほか、ドル売りの流れもあると説明。米雇用統計後については「仮に強い結果となっても継続的にドルが買われ、9月の50bp利下げ期待が完全に剥落することは考えにくい」とし、どちらかといえばドル安が進みやすいとの見方を示した。

株式

東京株式相場は下落。日経平均は前日終値を挟んでもみ合っていたが、午後にかけて下げ基調を強めた。為替相場の円高傾向を背景に電機や機械、輸送用機器など輸出関連株が安い。半面、電気・ガスや小売り、建設など内需関連が堅調で、相場全体を下支えしている。

日立製作所やソニーグループ、キーエンスがTOPIXの下落を主導。指数構成銘柄2132のうち、1524銘柄が下落、515銘柄が上昇している。

SBI証券の鈴木英之投資情報部長は、米雇用統計は「ふたを開けてみないと分からないところがあるため、基本的にきょうポジションを持つのは怖い」と指摘。もっとも、「円高に強いニトリホールディングスが買われたり、次を見据えたような値動きはある」と話した。

債券

債券相場は先物や長期債が上昇。前日に米長期金利が1カ月ぶりの水準まで低下したことに加え、日銀の長期・超長期債を対象とした国債買い入れオペの結果を受けて午後に上げ幅を広げた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、午後は「オペの応札倍率の低下を好感した可能性がある上、円高も進んでいる」と指摘。米雇用統計については「日銀の追加利上げ観測にも影響するため、注目度が高い」と述べた。

日銀は午前の金融調節で定例の国債買い入れオペを通知した。対象は残存期間5年超10年以下、10年超25年以下、25年超で、各年限の応札倍率はそれぞれ2.08倍、1.64倍、2.14倍に低下した。

日銀:国債買い切りオペ一覧 (表)

--取材協力:田村康剛.記事に関する記者への問い合わせ先:東京 山中英典 h.y@bloomberg.net;東京 我妻綾 awagatsuma@bloomberg.net;東京 船曳三郎 sfunabiki@bloomberg.net記事についてのエディターへの問い合わせ先:小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net小宮弘子、院去信太郎

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