7月の大雨で、鮭川村では特産のキノコの栽培工場が水没し、「工場の宝」とも言えるブナシメジの菌が全滅した。1カ月がたち、ようやく菌が入った瓶の廃棄作業が始まった。その数は70万本に上る。

鮭川村中渡(なかわたり)にあるブナシメジの栽培工場「荒木バイオ」。
7月の大雨で裏手にある曲川(まがりかわ)がはん濫し、工場が浸水した。

(7月31日/荒木バイオ・荒木淳一社長)
「ここまで水が来た」

7月31日の時点では、工場内はまだ水浸し…。従業員たちが懸命に泥をかき出していた。

大雨から1カ月、再び工場を訪ねると、床はきれいになっていた。しかし、泥水をかぶり全て故障してしまった機械はそのまま。
そして、「工場の宝」も…。

(荒木バイオ・荒木淳一社長)
「本当は19~21℃くらいで部屋を管理しているが、この水害で空調が故障し、今は38℃とかに上がってしまって、もう全滅。発芽もしないし、これから廃棄」

培養室にあった瓶に入ったブナシメジの菌は全滅。瓶の数は70万本にも上る。
荒木バイオではきのうから、この瓶を廃棄する作業にとりかかかった。
通常であれば、出荷が終わると瓶は再利用するが、今回は菌が死んでしまった瓶が多すぎるため、「瓶ごと」廃棄する決断をした。

(荒木バイオ・荒木淳一社長)
「瓶の廃棄はもったいないとは思ったが、やはり早く復興するためには、早く廃棄してまた新しい環境を整えてやれるのならやりたい」

本来、ブナシメジは9月ごろに出荷のピークを迎えるはずだったが、いまの工場には出荷できるものが何もない。

(荒木バイオ・荒木淳一社長)
「片付けの目途がなかなかつかない状態。年内にできるかできないか…。それもはっきりしない」

瓶の廃棄には全ての従業員10人で当たっている。元々は14人いたが、高齢の人を中心に今回の大雨を機に4人が退職したという。

(荒木バイオ・荒木淳一社長)
「従業員が辞めて行くかたち。今まで何十年も一緒にやってきたからね…」

国は8月15日、鮭川村を「局地激甚災害に指定する見通し」と明らかにした。
局地激甚災害は、被害額が一定基準を超えた市町村が対象で、中小企業の再建支援を手厚くするものだ。

具体的には、再建を目指す中小企業が金融機関から資金を借りる際、金利が1%ほど優遇されるなどの支援が受けられる。
しかし、荒木バイオでは被害総額が1億円を超えるとみられ、高額で、果たして再建できるのか、難しい選択を迫られている。

(荒木バイオ・荒木淳一社長)
「年だし、人もけっこう必要だし。再建したいが、それも無理してやっても資金もかかることだし。そこまで考えてません」

荒木社長は、「またこの場所で同じことが起きたら立ち上がれない。もし再建するなら別の場所も考えている」と話していた。

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