(ブルームバーグ):16日の日本市場は株式相場が大幅続伸し、日経平均株価の上昇率は一時3%を超えた。良好な経済指標を受けて米国の景気後退懸念が和らぎ、リスク選好ムードが広がっている。東証33業種は全て高く、主要株価指数は週間ベースで2020年4月以来の大幅上昇となる可能性が高まっている。

米国では7月の小売売上高が市場予想を大きく上回ったほか、ウォルマートが通期の売上高見通しを引き上げ、消費の底堅さが確認された。新規失業保険申請件数が予想外の減少となったことも米景気の軟着陸期待につながり、米金利スワップ市場が織り込む9月の利下げ幅は一時の50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近くから30bp程度に縮小した。

みずほ証券の倉持靖彦マーケットストラテジストは、7月の雇用統計で米国のリセッション(景気後退)懸念が高まったものの、失業保険と小売売上高を見る限りそれが解消されたと指摘。「イレギュラーな要因も加わり日経平均は急落してファンダメンタルズと乖離(かいり)していたが、落ち着きつつある」とみる。

米国の大幅な利下げ観測が後退する中、債券相場は大幅下落(金利は上昇)。金融市場が落ち着きを取り戻し、日本銀行による早期の追加利上げの可能性が再び意識されていることも重しとなっている。一方、リスク選好の売りで前日に全面安となった円相場は下げが一服し、対ドルでは2週間ぶり安値水準の149円台前半から148円台後半へ小幅に戻している。

株式

東京株式相場は大幅続伸。過度の米景気懸念が和らぐ中、為替の円安進行が追い風となる電機や機械、自動車などの輸出関連株が買われ、米金利上昇が好感された銀行、保険といった金融株も上昇している。東証33業種は全て高い。

TOPIXの上昇に最も貢献しているのが日立製作所で6.7%の値上がり。指数構成銘柄2132のうち、1779銘柄が上昇し、下落は286銘柄にとどまる。

T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、円安と堅調な米経済指標を受けて輸出企業は上昇していると指摘。ここ1カ月の間に大きく売られた株は、市場が暴落から落ち着くに連れて買い戻されているとの認識を示した。

債券

債券相場は大幅下落。堅調な経済統計を受け9月の大幅利下げ観測が後退した米国で金利が上昇し、円債先物も大きく下げた流れを引き継いでいる。10年物価連動国債入札は無難な結果となったが、相場への影響は限定的だ。

岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、物価連動債入札について「事前に警戒されていた割に最低価格は予想を上回り、無難に終えたのではないか」と分析。債券相場は米金利動向をにらみつつ、株価が大きく戻しているため、日銀の利上げ期待は徐々に高まってくるとの見方も示した。

入札結果によると、最低落札価格は104円30銭と、市場予想104円00銭を上回った。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は2.96倍と、前回の4.27倍から低下した。

日本債券: 10年物価連動国債の過去の入札結果 (表)

為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=148円台後半に水準を切り上げて推移。前日の米国市場で強い経済指標を受けて2週間ぶりに149円台に下落したことから、円売りポジションの持ち高調整が優勢となった。

りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは、円相場が149円台まで下落したことで「いったん利益確定の動きも出ている」と指摘。一方、日本株の大幅続伸を背景に投資家心理が改善していることは円の重しで、「お盆休みの最中ということもあり、方向感を持った動きが出づらい」と言う。

--取材協力:長谷川敏郎.

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