(ブルームバーグ):中国最大級の自動車ディーラー、広匯汽車服務集団の転換社債を5月に購入したジミー・ヤンさんは、退屈だが安全な投資をしていると信じていた。

だが、7月中旬までに、ヤンさん(38)は投資額100万元(約2080万円)の半分を失った。資本市場規制の強化により、広匯汽車服務を含む小型株とその関連債券がパニック売りに見舞われたためだ。

8010億元規模の転換社債市場は長い間、少額ながら健全なリターンをもたらすオアシスであり、昨年の残酷な市場低迷期にも避難先とされていた。

広東省広州市の製造会社で財務ディレクターを務めるヤンさんは過去の投資で成功した体験があったと言う。「AA+の格付けだったので安全だと自分に言い聞かせていた」と打ち明けた。

株式連動債が低迷している中国では、多くの投資家が打撃を受けている。16日終了週だけでも、藍盾信息安全技術と嶺南生態文旅が転換社債の不履行を発表した。

アパレルデザインの捜於特集団が3月にデフォルト(債務不履行)に陥るまで、転換社債はリスクゼロに近いと考えられていた。中国企業が1990年代にこの種の債券を発行し始めて以来、初の不払いとなったのが捜於特だった。

これまでデフォルトになった転換社債の総額は20億元に満たないが、少なくとも50銘柄、計580億元相当の転換社債が現在、ストレスを示す90元以下で取引されている。中国オンショア人民元建て転換社債指数は1年前と比べ9%近い下落だ。

裏目

オフショア市場で中国のハイテク大手が発行する転換社債が熱狂を招いているのとは、極めて対照的で、広州九遠プライベート・ファンド・マネジメントのパートナー、マックス・ドン氏は、「ダメージは転換社債市場にとどまらないだろう」と指摘し、特に中小企業に強い影響が及ぶとの予想を示した。

広匯汽車服務の場合、自動車販売の不振と市場全般の低迷に対する懸念が、1年以上にわたって同社株の重しとなっていた。

6月から7月前半にかけて、投資家が株式市場の上場規制強化に不安を抱き始めたため、売りが加速。政府は4月、市場から弱い企業を退出させることを目的に上場廃止の範囲を広げるなど幾つかの措置を発表した。

例えば、証券取引所のメインボードに上場している企業の時価総額が20営業日にわたり5億元を下回った場合、上場廃止となり得る。以前は3億元が最低基準だった。

広匯汽車服務の株価は最終的に20営業日連続で1元を下回り、そうした銘柄を排除する規制ルールが発動された。28億9000万元の転換社債は7月に上場廃止となった。

北京イータン・スマート・ロック・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、ツォウ・シャオクン氏は、「転換社債の取引ルールが完全に変わってしまった。恐怖がまん延し、低い価格で取引される転換社債の雪崩現象を起こしている」と述べた。

上場規則の厳格化は市場に対する投資家の信頼を高めることが狙いだったが、投資家の間で売り浴びせやデフォルトに対する懸念を引き起こした。

株式の上場廃止は通常、関連する転換社債の上場廃止につながる。これが常にデフォルトを招くわけではないが、今の中国でしばしば見られるように、資金調達の選択肢が限られている場合、発行体にとって償還を迎える社債のロールオーバーが困難になる可能性がある。

広匯汽車服務は、コメントの要請に応じなかった。

高利回り債投資に特化したプライベートファンド、北京GECアセット・マネジメントの創業者デン・ハオ氏は「上場廃止になると、市場の流動性が急速に枯渇するため、投資家は基本的に発行体の返済を当てにするしかなく、売り急ぎや死のスパイラルを引き起こす」と語った。

最悪の事態はまだこれからかもしれないとの見方もある。レーティングドッグ深圳インフォメーション・テクノロジーが提供したデータによると、2025年には約2580億元相当の転換社債が償還を迎えるなどし、翌年にはその額がさらに増えるという。

原題:Chinese Convertible Bonds Rocked by Once-Unthinkable Defaults(抜粋)

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