熊本市の中心部にある球磨焼酎専門バー『69spirits』です。人吉・球磨地方にある27の蔵元、全ての焼酎を揃えています。店主の星原克也(ほしはら・かつや)さんは1969年生まれ。『69spirits』という店の名前はこれに由来しています。

【69spirits 星原 克也 代表】
「熊本のお酒だけを扱うお店、(お客さんは)『珍しいね』と。ここは熊本なので、熊本の人にまず熊本のお酒を飲んでもらいたいなと思って始めたんですけど、だんだん定着してきました」

(常連客が瓶と饅頭の映え写真を撮ろうと頑張る)
「球磨焼酎、甘い物に合いますよね」
【星原 克也 代表】
「合う、合う。あんこが一番合うんだから」

脱サラして、2017年6月にこの店を始めました。今月でオープン7周年。「半分はコロナ禍できつい思いをした」と言いますが、現在はご覧の通り大盛況です。

【星原 克也 代表】
「旅行者を連れて来やすい。出張の人とか、旅行で来た人を連れてくると、熊本の酒がいっぱい飲めるからという評価はいただいています」

【常連客(同級生たち)】
「この店のいいところは星原君が『うーばんぎゃー』なところですね」(えっ?)「星原のことなんて言う?」「熊本弁で?」「『うーばーんぎゃー』だろ。いいかげん」

【2020年8月/星原克也 代表】
「これは球磨川の上流から水上村からS字になっています。球磨川の流れを意識して並べています(一番下流は?)一勝地ですね」

2020年7月の豪雨で球磨川が氾濫し、流域が浸水。球磨焼酎の蔵元も大きな被害を受けました。中には焼酎造りに欠かせない麹を作る麹室が浸水した蔵もありました。

【大和一酒造元 下田 文仁 代表】
「大なり小なり菌がいるんですよ、昔からの。これがないと造れないんですよね」

【星原 克也 代表】
「すっきり系のロックをまず2杯お持ちしました。両方とも今回の水害で壊滅的な打撃を受けている焼酎で麹室がダメになってしまって」

【星原 克也 代表】
「付き合いもある蔵なので残念だし悲しいし悔しい。だけど僕にできるのは球磨焼酎を飲んでもらって長いスパンで細く長く支援を続けていければと思います」
(カウンターの募金箱に客がお金を入れる)

(大和一酒造元が焼酎造りを再開)
『球磨焼酎』とは原料に国産米を使用している。人吉球磨の水でもろみを仕込んいる。人吉球磨で蒸留を行っている。人吉球磨でびん詰めを行っている。以上の条件を満たすものとされています。27の蔵元それぞれが複数の銘柄を持ち、芳醇な香りと深いコク、さまざまな味を楽しめます。

球磨焼酎を初めて飲む客には入門編として、飲み比べのサービスも行っています。
(星原さんが説明する)
「『減圧蒸留』『常圧蒸留』が球磨焼酎の大きく分けた造り方の違い。『常圧蒸留』が昔からあるタイプの球磨焼酎の造り方。常圧、1気圧の状態で蒸留するので、すごく沸点が高くなる。米の中の油とかが入ってコクのある焼酎になる。『減圧蒸留』は焼酎のもろみを釜に仕込んでポタポタ落ちてくるところを減圧、真空状態にすることによって、沸点が下がるんです。すっきり軽めの香りの立つ、キレのある焼酎ができます。こっちの『減圧蒸留』タイプを樽で寝かせます。木の樽、ウイスキーと同じです。樽で寝かせるので色が付きます。ちょっと香りもウイスキーみたいになります」

(減圧蒸留を試飲)客「飲みやすい」
(常圧蒸留を試飲)客「全然違う」「全然違う」
星原さん「全然違うでしょう。そこは好みなので、どっちが良い悪いではなく、どっちが好きか」

【宮城県仙台市在住 安田 夏輝さん】
「それぞれ違いがあって面白かったです。もっと詳しく知りたいなと思いました」
【宮崎市在住 高瀬 夢人さん】
「造り方でこんなに味が違うと思っていなかったので、飲んだからこそ分かることだなと感じました」

また2人、球磨焼酎ファンが増えたようです。

この店では定期的にちょっと変わったイベントが行われています。カウンターに立つのは熊本大学の学生たちが自主的につくった球磨焼酎愛好サークル、『Torico(トリコ)』のメンバーです。

【文学部 坂井美月さん】
「全然コミュニケーションがとれる方じやないんですが、ちょっとずつ。毎回(提供する)焼酎が変わるので新しく学ぶのも楽しいし、こうやって友達が来てくれるのもすごく楽しいです」

【友人】
「私も(サークルに)入っていたんです。大学の授業で球磨焼酎の授業があって」

熊本大学の熊本創生推進機構は特許庁主催の2020年度『全国地域ブランド総選挙』において球磨焼酎の魅力や今後の商品展開、ビジネスアイデアなどを提案し、『優秀発掘賞』を獲得。2021年度には授業の一環である地方創生プロジェクト演習において球磨焼酎のSNS発信・カクテルの提案などを行ってきました。これらを引き継ぐ形で『Torico』のメンバーは球磨焼酎と人吉球磨の観光を盛り上げようと自主的な活動として、去年2月からイベントに参加しています。

【法学部 福井 康一郎 前代表】
「いろいろな人との出会いがあった。毎回来てくれるお客さまもいるし、人のありがたみが分かる1年でした」

【法学部 古澤 龍 代表】
「(来てくれるのは)熊大の人が多いので、ほかの大学の人にも来てもらえたら、交流輪が広がって、いいんじゃないかと思います」

【来店客】
「接客も丁寧で焼酎もおいしくてよかった。おいしかったです」
「最初はマドラーで混ぜていただけだったのが、めちゃくちゃシェークしていて、『すげえ、あっすごいことやってる』と。だんだん豪華になって、来るたびにカクテルがおいしくなっている」

工学部の尾崎 太透さんは球磨村出身で豪雨災害で自宅は全壊したといいます。

【工学部 尾崎 太透さん】
「周辺の地区の家は全部更地になってしまって。最初は『球磨焼酎』という名前を知っているぐらいで、この年で飲まないだろうなと思っていたんですけど、おいしいと分かって、今はこの活動を続けていてます」

【来店客】
「夢のある若者は本当にやっぱり支援したいですね」

【星原 克也 代表】
「みんな生き生きしているでしょう。金を稼げる、人脈をつくることができるメリット。焼酎の蔵元さんも新しい客層の開拓になるでしょうし、みんながいい形で得をしています」

5月31日、球磨焼酎酒造組合は木村知事を『球磨焼酎大使』に任命しました。

【木村知事】
「星原さんが私の球磨焼酎の師匠みたいなもので、教星原さんから教えてもらった球磨焼酎をさらに深めて、広めていきたいと思います」

そして、『69spirits』の星原克也さんが『球磨焼酎特使』に任命されました。

【星原 克也 代表】
「熊本の酒を熊本で楽しく飲んでいただける場所づくりにね、これからも励んでいこうかなと思います」

「カンパーイ」「最高です、おいしい!」

球磨焼酎を愛する人たちが集い、愛する人たちを増やし続ける『69spirits』です。

球磨焼酎への深い理解と関心、愛情を持って、その魅力と情報を積極的に発信できるのが『特使』です。店内は15席、約250銘柄を揃えています。

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