北陸新幹線の県内開業から4カ月が経ち、福井県内の観光地には去年の3割増の人が訪れている一方で、新幹線駅から離れている海岸沿いには開業効果が波及していないのが現状です。そんな中、越前海岸沿いの旅館では、新幹線で来た観光客に 海側まで足を運んでもらおうと、地元の伝統工芸を詰め込んだ「コンセプトルーム」に客室をリノベーションしました。
越前町厨(くりや)にある料理旅館「かねとも」は、北陸新幹線の県内開業をきっかけに、旅館の一角をリノベーションしました。ルームキーは越前漆器で作られていて、部屋の名前にちなんだイラストが蒔絵(まきえ)で描かれています。
まず目に入るのが個性的な壁紙。越前和紙に描かれているのは、越前がにや日本海をイメージしたアートです。部屋のネームプレートは、越前打刃物のそば包丁がデザインされています。ガラスにも、越前和紙が装飾されています。
「かねとも」の中橋社長は「福井を感じてもらえれば」と話します。
ブラインドを開けると、目の前には日本海が広がります。中橋社長のおすすめは、ここから見る夕日だということで「季節ごとに景色が変わる。太陽が海面を照らしたときの色をイメージして作られた壁にも、越前和紙が使われてる」とこだわりを教えてくれました。
他にも、越前焼の湯のみや越前漆器のティッシュケースなど、部屋の至るところに丹南地区の伝統工芸がちりばめられています。
北陸新幹線の県内開業から4カ月。越前海岸沿いでの開業効果について中橋社長は「増えたかって言われると、今のところそれほど感じないというのが現状」と率直な印象を話します。
先日行われた県の定例会見でも、新幹線開業効果について杉本知事は「濃淡が明らかになってきている。新幹線の駅から離れると効果が見えにくい。新幹線開業後、県内の各観光地では去年の3割増の人が訪れるなど効果が表れている半面、駅から離れた地域までは効果が波及していないのが現状」と話していました。
そのため、開業効果を拡大させようと県が力をいれているのが「観光地の磨き上げ」です。観光資源を活かした魅力的な宿泊施設を整備することで「そこ」に行きたくなるような目的を作り出そうというのです。
県観光連盟は「去年は29軒の民宿や宿泊施設がリニューアルした」とし、県の「多様な宿泊施設整備支援事業」には今年すでに30件以上の申し込みがあり、6月補正予算に1億1000万円を盛り込みました。
「かねとも」は水産業も営んでいるため、越前がにのシーズン以外も、越前漁港で仕入れた新鮮な魚介類を提供していて、越前海岸の魅力をたっぷり堪能できるとしています。季節に応じて、4月5月にはフグ、7月8月にはアワビや岩ガキ、9月10月にはノドグロやアンコウなどの海鮮料理を越前焼きの器で提供します。
中橋社長は「県外から来たお客さんは福井は遊ぶところがないと言うが、目の前には海があるし、陶芸村で陶芸づくりの体験もできるので、アピールしたい」と力を込めます。マリンアクティビティが充実していて、いまの時期はイカ釣りも楽しめるということです。
北陸新幹線の開業効果を広い地域に波及させ持続させるために、県と地域が一体となり、1年を通して集客できる魅力を発信していきます。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。