(ブルームバーグ): 一部のストラテジストからバリュエーションが高過ぎるとの見方が強まっている半導体株について、台湾のトップテクノロジーファンドの運用者は人工知能(AI)向け需要の強さから2025年も投資人気は続くとみている。

  統一投信の郭智偉氏はブルームバーグのインタビューで、「今ハイテク株バブルが起きているとは考えていない」と語った。郭氏によると、業績が20-30%しか上方修正されないにもかかわらず、株価のバリュエーションが60-70%上昇する銘柄もあるなど一部で割高感が出ており、業績がキャッチアップするには時間が必要かもしれないと言う。

  ただ、郭氏は企業収益が「最も重要」だと考えており、バリュエーションの問題は大きな懸念ではないと指摘。ハイテク企業の利益は増え続け、時間の経過とともにバリュエーションも正常に戻るとの見方を示す。

  郭氏が運用する統一新亞洲科技能源基金(UPAMCニューアジアン・テクノロジー・アンド・エネルギーファンド)ではAI向け半導体メーカーの米エヌビディアや台湾積体電路製造(TSMC)が組み入れ上位銘柄に並び、今年に入り45%上昇。ブルームバーグのデータによると、競合するファンドの98%に対しアウトパフォームしている。運用資産は13億7000万台湾ドル(約66億円)。

  TSMCが18日に発表した第2四半期(4-6月)決算は市場予想を上回り、世界的なAI投資ブームが長期化するとの見方から24年の売上高見通しを上方修正した。アジアでは、8月8日に日本の大手半導体製造装置メーカーである東京エレクトロンが決算を発表する予定だ。

絶好調の半導体株に訪れる試練

  ブルームバーグ世界半導体指数が年初来53%上昇するなど、今年の半導体株は絶好調だ。一方、過熱感があるとの一部ストラテジストの見方を裏付けるように、株価収益率(PER)が71倍に達したエヌビディアに対しニュー・ストリート・リサーチが投資判断を引き下げるなどこれまでになかった動きも出始めた。

  さらに、11月の米国大統領選挙で共和党候補のトランプ前大統領が返り咲く可能性が高まっており、1期目の政権運営から地政学リスクや貿易摩擦が激化することへの懸念が再燃。加えて、バイデン政権が対中国の半導体規制を厳しくするとの観測も浮上し、足元で世界のテクノロジー株は低迷を余儀なくされている。

  こうした中で郭氏は、米中間の緊張が高まれば、台湾や日本の企業に投資チャンスがあるとみている。そのため、中国へのエクスポージャーを減らしたことを明らかにした。郭氏のファンドでは引き続き運用資産の約60%はアジアに配分する方針で、家電関連企業よりもAI関連の質の高い企業に注目していくと言う。

  「AIチェーンを考える際、半導体製造装置や半導体材料を投資家が思い浮かべるのは非常に簡単だが、同時に電力不足の問題にも目を向けている」と郭氏は語る。統一投信では韓国と日本のパワーグリッド(送配電網)設備への投資機会を探っているほか、明電舎など発電機や水処理システムなどに関連するメーカーにも注目する。

  郭氏は、現在の株式市場では米大統領選のニュースが大半を占めているが、AIは政治的な変化とは無縁だと強調し、「選挙の結果がどうあれ、AIの方向性に影響はない」とみている。

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