今、焼き肉店の倒産が急増しています。そんななか、あえて国産牛で苦境を乗り越えようとする店も。その訳を探りました。

■輸入牛タン高騰“数年前の倍”

 暑さが続くこの季節。スタミナを付けて乗り切ろうと、東京・荒川区の焼き肉店は多くの客でにぎわっていました。

 客が決まって頼むのが「タン」です。ただ、タンは肉のすべてが使えるわけではありません。削り取ったこの部分は…。

焼き肉 伽耶 店主
「捨てている。和牛では(割に)あわない」

 そのため店は、アメリカ産の牛タンを仕入れています。ところが…。

焼き肉 伽耶 店主
「(米国産)牛タンは上がっている。1キロ8200円。数年前は約4500円」

 歴史的な円安で、仕入れ値は数年前の倍近くに…。アメリカ産の牛タンの卸売価格もコロナ前と比べ、倍以上高騰しています。

焼き肉 伽耶 店主
「30年前は、焼肉店は利益率が良かった。今はどこも利益率を削って商売している」

 円安に加えて光熱費・人件費などの高騰ものしかかり、焼き肉店の倒産件数は過去最多のペースです。

 帝国データバンクによると、この半年で20件が倒産。去年の同じ期間と比べて、約2.5倍に上っています。

 ただ、価格競争もあり、店は値上げしづらい状況があるといいます。

焼き肉 伽耶 店主
「下町だから自分たちが食べにいって高いと大変。値上げはしたくない」

■苦境焼き肉店“あえて国産”のワケ

 東京・葛飾区の焼肉店もまた値上げせず踏ん張っていました。

和牛炭火焼肉 牛将 橋本羅名さん
「僕らは我慢している。下町で皆お客は常連で所得が決まっているから」

 カルビやハラミなど店で提供する肉のほとんどが国産です。仕入れ値は高くなりそうですがメリットは大きいといいます。

和牛炭火焼肉 牛将 橋本羅名さん
「これは和牛。やっぱり国産にこだわっているから」

 バングラディッシュ出身の店主は、和牛の味にほれ込み、25年前の創業時から仕入れを続けてきました。このこだわりが輸入肉高騰の折、功を奏すことに。

和牛炭火焼肉 牛将 橋本羅名さん
「和牛の場合は外国産と比べたら値段がちょっと安定している。円が200円になろうと関係ないじゃん」

 為替の影響を受ける輸入肉の仕入れ値は今や国産をしのぐ勢い。一方で、国産は安定しているそうです。

 羅名さんは日本人の妻と4人の子どもを守るため、他にも工夫しています。

 カットしているのは、牛の尻尾「テール肉」です。

和牛炭火焼肉 牛将 橋本羅名さん
「うちはメニューにもテール焼きがある」

 本来スープに使うはずのテール肉。その一部を焼肉用のメニューとして新たに提供を始めました。

 すると、これがテールスープ作りで膨大にかかる光熱費を節約する救世主になりました。

和牛炭火焼肉 牛将 橋本羅名さん
「(テールスープは)3日間煮込むからガス料金高いじゃん。(テール焼肉を)仮に1200円で出したら600円くらい(利益がでる)」

 さらに、焼肉店ではありますが、タンドリーチキンも販売。店はあの手この手で物価高をしのいでいました。

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