(ブルームバーグ): 共和党のドナルド・トランプ氏が米国の大統領選挙で優位に立つ中、世界の投資家は勝てる投資先を見極め始めている。歴史を振り返れば、日本株はアジア市場の中でアウトパフォームが期待できる有力候補だ。

トランプ前大統領Photographer: Eva Marie Uzcategui/Bloomberg

  トランプ氏が勝った2016年11月の米大統領選後1年間の値動きを見ると、日本株は米国や香港など世界の主要市場をアウトパフォームした。東証株価指数(TOPIX)の上昇率は39%、ドルベースでも30%上げ、米S&P500種株価指数やMSCIワールド指数の20%を上回った。

  11月の米大統領選挙に向け、先週行われた最初のテレビ討論会で民主党候補のジョー・バイデン大統領の失点が目立ち、世界の投資家はトランプ氏勝利の可能性に備え、急ぎ戦略を練り直している。トランプ政権が再び誕生すれば、中国への対応は厳しくなると予想され、中国株の代替投資先としての位置づけや円安による収益押し上げが日本株を上昇させるとストラテジストらはみる。

  インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは「米国債利回りの上昇に伴う円安・ドル高も日本株を下支えするはずだ」と指摘。日本株市場は製造業に大きく依存しているため、「トランプ氏の勝利は中国を除くアジアの株式市場のほとんどに恩恵をもたらすだろうが、日本株はより多くの恩恵を受ける」との見方を示した。

  アジアの新興国が持続的な経済成長を遂げる中、デフレが長年続いた日本株は劣勢に立たされるケースが多かった。しかし、ここへきてようやく日本銀行が17年ぶりに利上げするなどインフレ経済への転換期待が高まっているほか、コーポレートガバナンス(企業統治)改革の進展も評価され、TOPIXは4日の取引で史上最高値を34年ぶりに更新した。

  円相場は今年に入り対ドルで13%近く下落し、主要通貨の中で最悪のパフォーマンスとなっていることは日本経済全体にとって輸入インフレを引き起こすマイナス面もあるが、一方でトヨタ自動車や日産自動車など輸出比率の高い製造業の収益に対してはプラスとなる。ブルームバーグや東京証券取引所のデータによると、日本株の時価総額の半分以上は製造業が占めている。

  バリュエーションも日本株がグローバル投資家にとって魅力的に映る要因の一つで、中国を除く主要株式市場の中で最も割安だ。MSCIジャパン成長株指数の12カ月先予想株価収益率(PER)は22倍台と、MSCIワールドグロース指数の30倍台よりも低い。

  トランプ氏の勝利が日本株を一段と押し上げる可能性については不安要素もつきまとう。米中間の対立が深まれば、中国でのエクスポージャーが高い日本の製造業の業績や株価が打撃を被るリスクがあるからだ。

  RBCウェルスマネジメントアジアでシニア投資ストラテジストを務めるジャスミン・ドゥアン氏は「トランプ氏再選の場合、日本がアジアで最も安全な市場になるとは思えない」と話す。円安が続くと、トランプ政権が円高に誘導する可能性があり、その場合は対照的に中国株が恩恵を受けるとの認識を示した。

  とはいえ、トランプ氏は前回同様に対中強硬策を続けるとみられており、日本株がアジアで最も恩恵を受ける市場と予測する向きが多いのは事実だ。トランプ氏は自身がホワイトハウスに戻った場合、中国からの輸入品には60%を超す関税を課す可能性があると述べている。

  野村証券の松沢中チーフストラテジストは、もしトラが現実になれば「日本株は世界の投資家にとって良い選択肢の一つだ」とし、市場は日銀による金融政策の正常化に注目しており、「銀行株がより良いパフォーマンスを示すだろう」と言う。

  IGマーケッツのアナリスト、ヘベ・チェン氏は25年1月から第2次トランプ政権が誕生すれば世界情勢が厄介で騒々しくなることが想定され、グローバル投資家は「本能的に最も安全な場所を求める」と予測。リスクベータの高いアジアや新興国市場は輝きを失う可能性があるが、「日本とインドはトランプ氏1期目に米国との良好な関係を築いたおかげで、最も安全は2トップになるかもしれない」と語った。

More stories like this are available on bloomberg.com

©2024 Bloomberg L.P.

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。