進化を続けるAIは医療をどう変えるのか。AI で医療データを解析し、がん治療に役立てる計画を発表したソフトバンクグループの孫正義氏にその未来について聞きました。
「去年、父をがんで亡くし悔しい」医療とAIにかける思いとは
膳場貴子キャスター:
今回、ソフトバンクグループの事業では、医療とAIの融合を謳っています。
日本が遅れをとっている、医療のデジタルトランスフォーメーションの突破口になるのではないかと期待されていますが、医師や患者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
ソフトバンクグループ 会長兼社長 孫正義氏:
一つの病院で診てもらって、また別の病院で診てもらう時、また一から問診から検査をやり直すという経験をされたことがあるかと思います。
つまりデータが共有されていないんです。
今回、我々はアメリカで少なくとも2000の病院のデータを、それぞれシステムが異なるのですがアダプターを作り、一つのデータベースに全部まとめてAIで解析をしています。ものすごい進化しています。
例えばがんの場合、CTスキャン、MRI、血液検査、問診、そしてDNAのゲノム検査など色々ありますが、それらを全部AIで複合する。
しかもアメリカの770万人の 「がん」患者全てのうち、半分の患者のデータが。一元化されています。
これによって例えば同じ胃がんでも「突然変異で枝分かれした胃がん」に加え、心臓病の合併症を持っている患者さんに処方する薬の効果を知りたくても、一つの病院だけだと症例が限られてしまう。
しかし、770万人のがん患者、2000の病院にまたがったデータを一元でAIで解析すると、似たような患者さんの情報をリアルタイムで知ることができます。
新薬の論文を日本の医師は、英語で一生懸命読んでいますが、その手間暇もなくなります。
世界最先端の論文を全部、日本語で、その場で翻訳してくれるんです。
私は父を去年、がんで亡くしました。とても悔しかった。
こうした悲しい出来事を一日でも早く無くしたい。一人でも助けなければいけないと思っていましたが、その技術、道具がついに生まれたんです。これは使わなければ損です。
4年間でAIの能力は1000倍に 「見違えるほどの進化があった」
ソフトバンクグループ 会長兼社長 孫正義氏:
この1年間、特にAIが進化しました。4年間で能力が1000倍になったからです。
チップの数が10倍になり、チップあたりの能力が10倍となったわけで、それを扱うトランスフォーマーやチャットGPTのようなモデルソフトも10倍になりました。
10×10×10で、4年間で1000倍能力が上がったんです。
自転車と新幹線は20倍しか違わない。1000倍というのは、見違えるほどの進化があったということです。
ただすごいのは、ここから4年間でまた1000倍というのがあと3回、やってきます。つまりオリンピック3回分ですね。
我々の開発の現場では、1000倍×1000倍=100万倍、100万倍×1000倍=10億倍。コンピュータのAIの英知は10億倍になるんです
現在、『ChatGPT(GPT-4o)』はアメリカの医学試験に合格しています。
医学については普通の平均的な人間より上なんです。これが10億倍になるんです。
「人間が作ったものが、人間を超えるわけないだろう」ではないんです。
人間が作ったものを学習しているのではなく、「AIが勝手に自ら学習」しているんです。
「真正面から進化に対して純粋に取り組まないと日本はヤバい」
膳場キャスター:
全く違う世界がこれから広がるということですか?
ソフトバンクグループ 会長兼社長 孫正義氏:
全く変わります。日本は失われた30年を繰り返したくないのであれば、目をバーンと開かなければダメですよ。
知識人が上から目線でなんちゃってで、知ったかぶりで言いますが、専門家でもないのに非難しないでいただきたい。もっと心を開いて素直に、真正面から進化に対して純粋に取り組まないと日本はヤバいですよ。
膳場キャスター:
それだけのポテンシャルがある中で、今回の事業医療のDXですが、創薬など患者は具体的なメリットはいつくらいから享受できるのでしょうか。
ソフトバンクグループ 会長兼社長 孫正義氏:
アメリカでは既に「がん」の新薬のために製薬会社とバイオベンチャー200社がこのプログラムに参加しています。日本も年内くらいには、我々も一部開始します。
(「サンデーモーニング」2024年6月30日放送より)
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