舞台は埼玉県。コンクリート造りにすることで狭小克服とコストダウンを叶えた、歩道より狭い土地に建てたコンクリートハウスがある。

 住人(アルジ)は30代の夫妻。夫はアパレル関係、妻はWebの仕事をしている。おしゃれな雰囲気の2人の住まいは、幹線道路沿いに建つコンクリート打ちっぱなしのスタイリッシュな家。しかし、道路側の長さは16メートルもあるのに対し、玄関側は2.7メートルと横の歩道の幅よりも狭い。しかも建坪はわずか9.8坪だという。
 玄関から中に入ると、柱や間仕切りがなく、奥まで見通すことができる。高い位置には360度の開口部を設置。道路からの視線を遮りつつ空が見えることで、明るさと開放感が生まれている。

柱や間仕切りのない空間 高い位置にぐるっと窓がある

 結婚後、地元埼玉の賃貸マンションで暮らし、都心へ通勤していた住人(アルジ)夫妻。新居を建てる際、駅近で通勤時間30分以内の場所を希望したが、予算内で見つけられた条件に合う土地は、歩道より狭い建坪9.8坪の土地だった。あまりにも狭すぎて、一度申し込んだものの踏ん切りがつかず、土壇場でキャンセルして、その後、再度契約を申し込んだ……というほど悩んだのだという。

 そんな狭小を克服して、さらにコストも抑えられたのは、実はコンクリートのおかげ。木造は柱を多くする必要があるため、狭い空間がさらに狭くなってしまう。鉄骨造も提案されたが、コロナ禍の影響で木材や鉄が高騰しているため、相対的にコンクリートがお得になった。しかもコンクリートであれば、外壁作業が少ないので歩道や隣地ギリギリまで家を建てることが可能。コンクリートの家には、そんな狭さとコストの問題を解消する意外なメリットがたくさん詰まっていた。

全体を木とスチールで統一している

 玄関の靴箱は、小物などを入れるシェルフを転用。インテリアの素材は木・スチール・コンクリートに統一することで、空間をすっきりとした印象にしている。
 玄関を上がるとすぐにキッチンがある。スタイリッシュなキッチン台は既製品をカスタムしたもので、こちらも木とスチールが使われている。

玄関を入ってすぐにあるキッチン 

 空間は段差でゆるやかに仕切られていて、キッチンから一段上がったところはダイニングスペース。ここの家具選びで一番苦労したのがテーブルで、ダイニングは奥への動線の途上にあるので、邪魔にならないよう三本脚の半円形のオーダーメイドのテーブルを置いた。普段は壁付けで使用し、来客時は段差を椅子代わりにすると大人数でも対応できる。

スペース確保のため特注した半円形のダイニングテーブル

 もう一段上は、リビング。360度の窓の位置が目線の高さになるが、交通量が多い幹線道路沿いでもコンクリートとペアガラスのおかげで騒音や振動が軽減されている。そんなリビングの端には床下へ続く階段がある。降りると、大容量の収納スペースが。後から作り変えることができないコンクリート造でも、この床下収納を確保したおかげでメインの空間は物がなくすっきりと見える。だが、なぜか階段には洗濯機が…。住人(アルジ)は「ここしか置くところがなかった」と明かす。

1階の最上段はリビング 左側に床下へ続く階段がある

 2階に上がると、奥にはガラス張りの浴室が。妻が「このバスタブをどうしても置きたくて家を建てたと言っても過言ではない」というほどのこだわりのスペースは、家の大きさに対してかなりの面積を使っている。建築家からユニットバスにするよう提案されても譲らなかったという、まるで海外の家にあるような妻の夢が詰まったおしゃれなバスタブ。しかし直置きのうえ保温性もないため、実際に入る時には様々な苦労があるとか。

妻が熱望したバスタブのある浴室と水回り

 狭い土地でも諦めずに建てたスタイリッシュな家。コンクリート造はどうしても暑さや寒さが厳しいというデメリットもあるが、「元々コンクリートって無機質な表情なので、何でも受け止めてくれるなと感じました。ただ暑さと寒さは覚悟して…自分たちが選んだ道なので」と夫。一方、妻も「家のかっこよさが実現できたので、私たちの方が家に合わせて暮らしていこうと思っています」と語る。

 コンクリートにおしゃれな2人の”好き”が詰まった空間。これからも住人(アルジ)は家に合わせながら暮らし、日々の変化を楽しんでいく。(MBS「住人十色」2024年6月22日放送より TVerでも放送後1週間配信中)

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