雨の日や、週末の深夜などによく聞く「タクシーがつかまらない」という声。その解決策となるのでしょうか。8日から始まった「日本版ライドシェア」。一般の人が自家用車を使って有料で客を運ぶサービスです。日本版ライドシェアでは、タクシー会社がその管理・運営を行いますが、利用者には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

見た目は“乗用車で白ナンバー” フロント部分に「ライドシェア」の文字

喜入友浩キャスター(都内)
「(車のフロント部分に)『ライドシェア』と書いてありますね。見た目は乗用車に見え、白ナンバーですが、『ライドシェア』という表示がありました」

4月8日、2人の大臣は出発式に出席し、「ライドシェア」の必要性を訴えました。

河野太郎 規制改革担当大臣
「どこかに行きたいのに行けない、足がない。そういう問題が起きております。こうした事を日本で放置しておいていいはずはありません」

2024年4月8日から東京23区、武蔵野市、三鷹市で始まった「ライドシェア」。

導入時間帯
・月~金 午前7時~午前10時台
・金・土 午後4時~午後7時台
・土 午前0時~午前4時台
・日 午前10時~午後1時台

平日は午前7時から10時台まで、週末は深夜にも運行が認められます。

タクシー会社がドライバーを管理することなどが条件とされていて、配車をアプリから依頼する仕組みです。

喜入キャスター
「配車アプリで行き先を選択すると、タクシーなど車種が選べるようになっていますが、その中に、自家用タクシーというものがあります。選んでみます」

さっそく配車を依頼しましたが…

喜入キャスター
「自家用タクシーは現在ご利用いただけません。対応可能なドライバーが見つかりません、と表示されました」

稼働台数が少ないのか、利用できませんでしたが、都内のタクシー会社は続々と参入を決めています。

ドライバー「タクシー会社に雇用されているが何の補償もない」

東京都江東区にある「ロイヤルリムジン」では、初日の8日、ライドシェアの許可書「有償運送許可書」が手元に届いたと言います。

ドライバーの面接はこれからですが、社内には既に「アルコールチェッカー」が用意されていました。

ドライバーがアルコールチェックを行うと…

ロイヤルリムジンの担当者
「12時4分。今、アルコールチェックしたデータが上がってきました」

ビデオ通話なども行い、リモートで確認できる仕組みです。

乗車前の安全管理は、タクシー会社が行うことになり、採用したドライバーには今後、研修なども実施するといいます。

ロイヤルリムジン 堀江一生 顧問
「ドライバー不足がこの業界には慢性的にあって、これを解消し得る1つの手段かなと。二種免許を持たないドライバーが有償輸送を行うことによって、興味を持ってもらえたり、タクシー・ハイヤーのリクルートに繋がるきっかけになる側面もあるかなと」

ライドシェアに期待を寄せるタクシー業界。

一方で、実際に初日の朝から、ライドシェアのドライバーとして働いた男性は…

ライドシェアのドライバー(40代)
「僕らはタクシー会社に雇用されているが、何の補償もない。(酔っ払った)お客さんを乗せました、車の中で吐かれました、その臭い車に本業のときにも乗らないといけないし、下手したら業務時間外に掃除もしなきゃいけない

十分な補償が受けられない会社もある中、初日の売上げは1万5000円ほどだったと言いますが…

ライドシェアのドライバー(40代)
「もの足りない。きょうの数字がこれからもずっと続くのであれば、フードデリバリーとかをやっている若い人の参入はないかなと」

また、ライドシェアの料金は、タクシーと”同額”に設定されていることから…

20代男性
「プロのドライバーさんに任せた方が安心感がある」

個人タクシー運転手
「タクシーが欠車になっている、動いていないタクシーが何台かある。それが動き出せばいい。人材不足的なところがあると思うので、そっちを解消していったほうがいいのでは」

ライドシェアは、4月に神奈川、愛知、京都などの一部地域、5月には札幌、大阪、神戸などの一部地域でも順次始まる見通しです。

アメリカでは一般の会社が運営 サービス競争の激化も

藤森祥平キャスター:
日本版ライドシェアは海外のものとどう違うのか、見ていきます。

ライドシェア 海外との比較
・時間 東京23区など→月~金は午前7時~10時台など アメリカ→制限なし
・台数 東京23区など→月~金は1780台など アメリカ→制限なし
・値段 東京23区など→タクシーと同水準 アメリカ→変動制
・運営 東京23区など→タクシー会社に限る アメリカ→アプリ事業者
※自動運転ラボ発行人 下山哲平氏より

ざっとまとめると、時間や台数など日本版のものは試験的ということもあって条件がたくさんあります。

事情に詳しい下山哲平氏によると、アメリカでは時間も台数も制限はなく、値段については変動性で需要と供給で変わってくるそうです。日本は時間制限・台数制限もあります。

そして運営に関して、日本はタクシー会社に限っていますが、アメリカではアプリ事業者とされ、一般の会社も参入できるのが大きな違いだということです。

小川彩佳キャスター:
(藤森さんはニューヨーク支局で勤務していましたが)アメリカなどでもよく使われましたか。

藤森キャスター:
頻繁に、当たり前のように使いました。一般のドライバーの方に運んでもらうことがほとんどだったと記憶しています。

小川キャスター:
アプリをダウンロードして配車していくと。日本とずいぶん違いがあるんですね。

藤森キャスター:
アプリもいろいろあって、そのアプリにタクシー会社も刺激を受けて、またサービスを変えていくなど、競争が激しくなっていました。

「観光地は観光地、高齢者の多い地域はそれなりに自由化拡大などの工夫が必要」

藤森キャスター:
日本での今後の展開について…

経済担当 片山薫 記者:
「規制緩和に反対していたタクシー会社が主体となった。“なんちゃってライドシェア”と言われても仕方がないのでは」

人手不足の解消は簡単ではなく、海外並みにするには法改正が必要なのでは、と話していました。

小川キャスター:
日本版ライドシェアを使っていきたいと思われますか。

キニマンス塚本ニキさん:
私は今のところ、「タクシーが増えればいいのに」と思ったことはあまりないです。

約10年前に海外旅行に行く際に、気軽にライドシェアで「Uber」や「Lyft」を使ってました。

ただ、旅の醍醐味として今は話せますが、どんなドライバー・車が来るかわからない。私の場合はトラブルはなかったんですが、利用者側は便利かもしれないが、どういう保障があるのか、もしトラブルがあったら誰が責任を取ってくれるのか

おそらく雇用形態でも同じことが言える。もしお客さんとトラブルがあった場合、運転手側はどこまで労働者の権利が保障されるのか。曖昧のままだと、(日本でライドシェアは)なかなか進まないのではと思います。

藤森キャスター:
(私が海外で利用した際は)車種と顔はわかりましたが、実際にどんな方が来るのか、事前にはわからなかったです。

小川キャスター:
安全性の議論もあり、雇用形態の議論もあるという中で、日本政府は6月までに規制の見直しをしていく方針なんですよね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
この問題は0か100かという話じゃないんです。完全自由化と規制強化というわけではない。やはり地域に合わせて、観光地は観光地、高齢者の多い地域はそれなりに自由化を拡大していくなどの工夫が必要だと思います。

学生などに聞いても意外と慎重論が多いです。「地方に住んでいるおばあちゃんが病院に行けるようにしてほしい」という声もあり、やはり、その地方に合わせた工夫をどうやっていけるかがポイントになると思います。

小川キャスター:
試験的な段階なのかもしれませんが、まだまだ利用者としてのメリットが見えにくいという状況ではありますよね。

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