シンガポールで15日、ローレンス・ウォン副首相兼財務相(51)が首相に就任した。首相の交代は約20年ぶり。地元メディアは「新しい時代の幕開け」と伝えた。経済格差や少子高齢化といった課題に取り組み、与党・人民行動党(PAP)の支持者離れを食い止められるかが注目される。
ウォン氏は、1965年のシンガポールの独立以降に生まれた初めての首相となった。同日夜に開かれた就任式でウォン氏は、先人が築いた「礎」に敬意を示しつつ、新世代に向け「私たちのやり方で国を率いる」と決意を語った。外交面では、従来の等距離外交を維持する姿勢を示した。
政策の継続性を重視し、閣僚の大半は前内閣から留任。ウォン氏も引き続き財務相を兼務する。在任約20年を経てウォン氏にバトンを引き継いだリー・シェンロン前首相も、上級相として閣内にとどまる。
シンガポールでは来年11月までに総選挙が行われる。2020年に実施された前回選のPAPの得票率は61・2%で、前々回15年の69・9%を下回った。昨年7月に当時の運輸相が汚職関与で逮捕されるなど、スキャンダルも相次ぐ。不祥事を防ぐために設定された国会議員の年収は、世界各国の議員報酬で最も高く、経済格差が広がる中で国民の不満は高まっている。
ウォン氏は首相就任を前に、「より多くの野党が必要だとする(国民の)要望は、あらゆる立場の声を反映してほしいということだ」と指摘。今後さまざまな声に応えるとしており、ウォン氏の手腕が問われる。【バンコク石山絵歩】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。