イランによる空からの攻撃をイスラエル側は迎撃している。エルサレム市内ではサイレンが鳴り響き、上空では迎撃の爆音が響き、閃光が走った=エルサレムで4月14日午前1時46分、松岡大地撮影

 イラン革命防衛隊は13日夜(日本時間14日朝)、在シリアのイラン大使館空爆などへの報復として、イスラエルを標的にミサイルや無人機(ドローン)による大規模な攻撃を実施したと発表した。イスラエル軍によると、少女1人が負傷したほか、軍事施設1カ所が軽微な被害を受けた。

 イスラエルのネタニヤフ首相は13日深夜の声明で「我々に危害を加える者には攻撃を加える」と強調。イスラエル政府高官も地元メディアに「前例のない対応を取る」と語った。イスラエルが今後、イランに対して武力行使に出る恐れもあり、中東情勢は混迷を深めそうだ。

 イランが自国領土からイスラエル国内を直接攻撃したのは初めて。革命防衛隊は「シオニスト政体(イスラエル)の数多くの罪に対する対応」だとしている。

 イスラエル軍によると、イランによる攻撃は無人機と巡航ミサイル、弾道ミサイルによって行われた。合計200発以上に及んだが、イスラエル軍はほとんどを迎撃。巡航ミサイルは10発以上を国外で撃墜した。また、イランの攻撃に呼応する形で、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、イスラエルが併合しているゴラン高原に向けてロケット弾数十発を発射したと発表した。

 イランはイスラエルや同国を支援する米国との軍事衝突を避けるため、イスラエル国外の関連施設を標的とするなど抑制的な対応を取るとの見方もあった。だが、イスラエル領内への直接攻撃を選んだことで、対決姿勢を明確にした形だ。ただ、速度の遅いドローンによる攻撃が主体だったことなどから、紛争拡大を避けるため、被害が小規模にとどまるよう計算した可能性もある。

 イスラム教シーア派国家のイランは長年、イスラエルと敵対を続け、ヒズボラやパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスなどを支援してきた。昨年10月にハマスとイスラエルの戦闘が始まってからは、ヒズボラなどの親イラン武装組織が周辺国からイスラエルに砲撃などを開始。イスラエルはイランがシリアを経由してヒズボラに武器を供与しているとして、革命防衛隊を狙った空爆を繰り返していた。

 1日にあった在シリアのイラン大使館空爆では、革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の幹部ら13人が死亡した。イランはイスラエルによる攻撃だったとして報復を宣言。イラン最高指導者ハメネイ師も「我々の領土への攻撃のようだ」と非難し、イスラエルは「罰せられねばならないし、そうなるだろう」と語っていた。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。