パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファから避難する住民=5月6日、ロイター
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 イスラエル軍は6日、パレスチナ自治区ガザ地区最南部ラファの東部地域に住む市民に退避を求めたと明らかにした。イスラエル軍はラファへの侵攻を計画しており、侵攻前に事前の避難を呼びかけた形だ。ガザ地区での戦闘休止を巡り、恒久的な停戦を求めるハマスとの協議は難航しており、イスラエルはハマスに対して圧力をかける狙いがあるとみられる。

 毎日新聞の現地助手によると、住民の避難を呼びかけるビラは5日夜以降、飛行機で投下された。イスラエル軍は「限定的な範囲」での避難としているが、避難民は10万人に及ぶとみられる。新たな避難場所としてラファ西部や南部ハンユニスを指定しており、避難先で物資の供給を拡大する計画もあるという。一部の住民はすでに避難を開始している。

 一方、ハマスは5日、イスラエル側が提示した休戦案に対する回答を仲介国のカタールとエジプトに伝えたと発表した。内容は明らかにしていないが、今回の休戦を恒久的な停戦につなげるよう改めて要求した可能性がある。ハマスは5日の声明で、停戦やイスラエル軍の撤退、避難民の帰還などを実現させるため、「前向きで責任あるアプローチ」を続けていると強調した。

 エジプトの首都カイロで4日から交渉に臨んでいたハマスの代表団は、詳細についてカタールにいる幹部と協議するため、いったんカイロを離れると明らかにした。エジプトメディアによると、代表団は7日にカイロに戻り、合意の締結を目指して交渉を再開するという。

 交渉中の休戦案は、人質解放や人道支援の拡大だけでなく、ガザ地区の「持続的な平穏」について協議を始めることも盛り込まれており、イスラエル側が譲歩した内容となっている。一方、ハマスはイスラエルが休戦後、戦闘を再開しない保証を求めている。

 イスラエルのガラント国防相は5日、「ハマスが合意するつもりがないという兆候がある」と語り、ラファへの侵攻が「近い将来に起きることを意味する」と述べた。ネタニヤフ首相は休戦が実現した場合でもラファに侵攻する姿勢を示し、ハマスの態度は硬化している。

 ガザ地区では5日も戦闘が続いた。ロイター通信などによると、ガザ地区南部のイスラエルとの境界にあるケレム・シャロム検問所では5日、ハマスによるロケット弾攻撃でイスラエル兵4人が死亡した。検問所は閉鎖され、人道支援物資の搬入が停止した。ガザの保健当局は5日、これまでの戦闘による死者は3万4683人になったと発表した。【エルサレム松岡大地、カイロ金子淳】

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