米ピュリツァー賞委員会は2日、国内各地の大学でイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区での軍事行動に抗議するデモなどの取材を続ける学生ジャーナリストたちの優れた報道をたたえる声明を発表した。「報道の自由の精神に従い、困難で危険な状況の下で逮捕される危険を冒しながら、全国的なニュースの記録に取り組んだ」としている。
同賞は米報道界で最も権威のある賞とされ、各地の大学にデモが広がるきっかけとなったニューヨーク市のコロンビア大が運営にあたっている。コロンビア大では、学生らが敷地内の建物を占拠したことを受けて大学当局が報道機関の立ち入りを厳しく制限した。その結果、先月30日夜に武装した警官隊が突入して学生らを強制排除した場面をキャンパス内で取材できたのは入構資格のある学生ジャーナリストたちだけだった。
コロンビア大の学生が運営するラジオ局WKCRの記者は、警官隊突入の様子を時おり声を震わせながらキャンパスから中継した。大学への警察介入の瞬間は大きな注目を集め、当日はアクセスが集中してウェブサイトが一時的にダウンしたという。ピュリツァー賞委員会は、声明でコロンビア大の名前を挙げて学生ジャーナリストたちによる「並外れたリアルタイムの報道をたたえる」とした。
報道機関の立ち入りを制限した大学当局の方針に対しては、「報道の自由」に反するとして国内外の主要メディアから批判の声も上がっている。一方、デモに参加する学生たちは、主要メディアに対する強い不信感を抱えており、学生ジャーナリストの取材を称賛した。コロンビア大の学生レイラ・サリバさんは「彼らはクリック数や閲覧数を稼ぐために、私たちをさらに暴力的な環境にさらす。私たちは学生であり、人間であり、メディアのコンテンツではない。WKCRの記者たちは、プロのジャーナリストよりも事実を確認するために良い仕事をした」と語った。別の学生は「主要メディアは米国の大学で起きていることよりも、ガザで起きていることを報じるべきだ」と話した。
米国ではこの20年近くの間におよそ3分の1の地方新聞が消滅し、地元紙が一つもない「ニュース砂漠」と呼ばれる現象が広がる。大学を拠点とする学生新聞が主要メディアをしのぐスクープを発表するほか、ローカルメディアを買収して地域報道を担う例もあるなど、学生ジャーナリストたちの存在感が高まっている。【ニューヨーク八田浩輔】
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