韓国の尹錫悦大統領=韓国で2024年10月、ロイター

 韓国の国会は14日午後4時から、野党6党が提出した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案を採決する。投票は無記名で行われる。保守系の与党「国民の力」の議員8人以上が賛成すると、弾劾案は可決され、尹氏は大統領の職務停止となる。

 与党の国会議員団(108人)は13日時点で「反対」の方針を維持した。ただ、韓国メディアによると7人が賛成を表明しており、これがさらに増える可能性もある。14日の採決前に議員総会を開催。弾劾案への賛否や、採決に出席するかについて協議する。

 与党トップの韓東勲(ハン・ドンフン)代表は弾劾案への賛成を呼びかけているが、韓氏自身は議員ではなく、影響力は限定的とみられる。国会議員団の議論を主導するのは尹氏に近い40~50人の「尹派」だ。

 議員団トップの権性東(クォン・ソンドン)院内代表は尹氏と同じ検察官出身で、尹派の代表格。尹派は議員総会でも弾劾案の否決を改めて主張するとみられる。

 尹氏は12日の談話で「弾劾するにせよ、捜査するにせよ、堂々と立ち向かう」と述べ、徹底抗戦の姿勢を示している。韓国メディアによると、大統領自身が弾劾を覚悟したと受け取れる発言をしたことから、韓氏に近い議員からは「議員たちの賛成への(心理的)負担が減るのでは」(金鐘赫議員)といった見方も出ている。

 世論は弾劾賛成が大勢を占める。世論調査機関「韓国ギャラップ」の13日の発表によると、賛成は75%。尹氏の支持率は過去最低を更新し、11%だった。ソウルの国会前では13日夜も、大勢の市民が弾劾案の可決を要求する集会を開催した。

 可決には国会の在籍議員300人のうち3分の2に当たる200人以上の賛成が必要。野党と無所属議員は計192人。否決された場合、野党は来週に3度目の弾劾案の採決を目指す方針。

 一方、捜査当局は戒厳令の宣布が内乱容疑に当たるとして、尹氏や関与した軍、警察関係者らへの捜査を続けている。ソウル中央地裁は13日、韓国警察トップの趙志浩警察庁長官とソウル市警察トップの金峰植長官の逮捕令状を発付した。

 戒厳令の発令の際に国会を封鎖するよう警察官に指示したとして11日に当局が内乱容疑で2人を拘束し、令状を申請していた。当局はただちに2人を逮捕した。当局は2人を内乱で重要な役割を果たしたと位置づけている。【ソウル福岡静哉】

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