北朝鮮に関する国連安全保障理事会の会合=2023年4月、米ニューヨーク(ゲッティ=共同)

【ニューヨーク=平田雄介】北朝鮮の核・ミサイル開発を禁じる一連の国連安全保障理事会決議に基づき制裁違反の有無を調べる専門家パネルの任期が30日で切れ、2009年の発足以来15年間の活動が終了する見通しだ。北朝鮮との軍事協力を深める常任理事国ロシアが3月、1年間の任期延長を求める決議案に拒否権を行使した。ロシアは、今月24日採決された宇宙核配備防止案にも拒否権を発動し、核不拡散体制を乱す行動を続けている。

専門家パネルを巡り、ロシアは12日、1年間の任期延長を認める独自案を提案したが、採決の見通しは立っていない。独自案が、対北朝鮮制裁に関する「制限範囲の更新は安保理が決定する」とし、拒否権を持つロシアが制裁を解除できる内容となっているからだ。

安保理は、北朝鮮が初めて核実験をした06年以降、17年までに11本の決議を全会一致で採択してきた。北朝鮮の核実験や弾道ミサイル開発に加えて、北朝鮮への原油などの輸出を禁じている。

しかし、安保理の協調は、18年と19年の米朝首脳会談における非核化交渉の挫折を機に崩れた。中国は制裁緩和を求めてロシアと連携。中露両国は22年5月、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射を受けて制裁強化を求めた米国の決議案に拒否権を行使するなど、安保理の機能不全の色は濃くなっていった。

専門家パネルの活動が終了しても、安保理制裁は存続する。ドイツ国際安全保障研究所のエリック・バルバッハ博士は、「韓国や先進7カ国(G7)、欧州連合(EU)は連携を強化し、制裁逃れの監視を強めるだろう」と予測する。

他方、米国務省で核不拡散を担当したペンシルベニア州立大のジョセフ・デトーマス教授は、「超大国は核不拡散を共通の利益とみていない」とし、米ソ冷戦期のような核開発競争の再来を懸念する。

ロシアは今月24日、宇宙空間への核兵器の配備を防ぐ決議案に拒否権を行使した。ロシア1カ国が反対し中国が棄権する構図は、専門家パネルの任期延長案否決時と同じだ。

安保理筋は「ロシアは中朝と連携し、日米韓を『仮想敵』として核戦力を増強するのだろう」と分析している。

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