シリアの首都ダマスカス郊外の「セドナヤ刑務所」で被収容者の捜索活動を見守る人々=2024年12月9日、ロイター

 米連邦大陪審は、シリアのアサド前政権下で反体制派の拷問を指示したとして、情報機関「空軍情報部」のジャミール・ハッサン部長ら2人を戦争犯罪の罪で連邦地裁に起訴した。米司法省が9日発表した。空軍情報部は前政権時代に「シリアで最も冷酷な情報機関」として国民に恐れられた。起訴状にも電気ショックや爪はぎ、酸をかけるといった拷問の事例が記されている。

 ハッサン被告らは2023年11月に起訴され、今月9日に起訴状が公開された。起訴状によると、首都ダマスカスのメッゼ空軍基地にある収容所では12~19年、米国民や米国との二重国籍保有者を含む反体制派の活動家が収容され、ハッサン被告の指示で日常的に拷問されていた。

 宙づり、電気ショック、熱湯や酸による傷害、ホースによるむち打ち、塩化ビニールパイプによる殴打といった身体的な拷問に加えて、家族の殺害や性的暴行をちらつかせて脅したり、他の被収容者への拷問を見せたり、血で染まった目隠しを着けさせて尋問したりする心理的拷問も行われていた。死亡した被収容者の遺体がある部屋にすし詰め状態で監禁される例もあった。ハッサン被告らは拘束されておらず、所在も不明だ。

 アサド前政権は父子2代にわたって独裁体制を敷き、空軍情報部などの情報機関による国民の監視を通じた恐怖支配で統治していた。メッゼ空軍基地での拷問は氷山の一角で、8日の政権崩壊によって、過去の拷問や虐待の実態が明らかになる可能性がある【ワシントン秋山信一】

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