HTSが率いる反体制派の戦闘員=シリア北部アレッポ県で2024年11月29日、ロイター

 シリア内戦で大規模攻勢を仕掛けている反体制派は、米国がテロ組織に指定している「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)が主導している。国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派「ヌスラ戦線」を前身とする組織だが、近年はアルカイダとの関係を絶ち、アサド政権打倒に集中してきたとされる。一体、どんな組織なのか。

 「この政権(アサド政権)を打倒することが目標だ」。HTSを率いるジャウラニ指導者は5日、米CNNテレビのインタビューにこう強調した。

 CNNや中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」などによると、ジャウラニ氏はイラクでアルカイダ系の戦闘員として反米武装闘争に身を投じた経験があり、2011年にシリア内戦が始まってからは、ヌスラ戦線を設立して参戦した。

 だが、16年ごろにアルカイダとの関係を絶ち、17年には複数の武装組織を吸収する形でHTSを結成。拠点とするシリア北西部イドリブ県で「シリア救国政府」も設立し、支配地域での統治を強めた。HTSは最大3万人規模の戦闘員を擁するとみられ、北西部の支配地域では石油などの資源も管理しており、一定の経済力もあるとされる。

HTSが率いる反体制派の戦闘員=シリア北部アレッポ県で2024年11月29日、ロイター

 HTSは米国や国連などがテロ組織に指定している。だが、ジャウラニ氏はCNNに「イスラム統治を恐れる人たちはきちんと理解していない」と語り、キリスト教徒や少数民族もHTSの統治下では安全に暮らせると強調。「他の集団を消す権利は誰にもない。多くの宗派がこの地域で何百年も共存してきた」と語った。政権打倒後は「国民に選ばれた議会」を設立する考えも明らかにした。

 シリアでは長年、アサド政権による強権的な支配が続き、内戦が始まってからは各地で政府軍による激しい空爆も相次いだ。政治犯として収容された人たちの多くが厳しい拷問にかけられ、そのまま行方不明になった人も数多い。

 それだけに、HTSが制圧した北部アレッポや中部ハマでは、アサド政権の支配からの解放を祝う市民の姿も報じられている。

 ただ、シリアではクルド人組織を含む多様な反体制派が各地で勢力を維持しており、過激派組織「イスラム国」(IS)も今月、東部で一部地域を支配下に置いたとの報道もある。仮にアサド政権を打倒したとしても、反体制派がまとまるのは容易ではないとみられる。【カイロ金子淳】

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