南米ペルーの首都リマで開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は16日(日本時間17日)、首脳宣言である「マチュピチュ宣言」を採択して閉幕した。宣言では「自由で開かれた、公正で透明性のある貿易・投資環境の実現」や「ルールに基づく多角的貿易体制の支持」などを盛り込んだ。
APECの21カ国・地域による経済統合構想「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」実現に向け、加盟国に年次報告を求め、2030年に包括的な評価を実施するとした個別の声明も発表した。
また、紛争解決手続きが機能停止状態に陥っている世界貿易機関(WTO)について、「全ての機能の改善に必要な改革へのコミットメント」を再確認した。
米国では、関税引き上げなど保護主義的政策を掲げているトランプ次期大統領が来年1月に就任する。それに先立って自由貿易の推進を確認することで、保護主義の高まりをけん制した形だ。
首脳宣言は国際情勢について「前例のない世界の急激な変化が貿易、投資、気候変動を含む環境、食料・エネルギー安全保障へ与える甚大な影響に留意する」と明記した。
議長国のペルーは議長声明を発表。一部の加盟国がロシアによるウクライナ侵略や、イスラエルの攻撃が続く中東ガザの状況について意見表明し、世界経済への影響について言及したことを明らかにした。
25年のAPECは韓国で開催される。26年は中国が議長を務めることも新たに発表された。石破茂首相は日本が31年の議長に立候補する意思を表明した。
石破首相は16日の会合で、デジタル・AI(人工知能)の活用や各国の事情に応じた脱炭素化の推進に協力していく考えを表明。ウクライナ侵攻を続けるロシアを非難し、中東の人道状況に対しても強い懸念を示した。
首相は閉幕後、記者団に「国際社会が極めて複雑化している中で、APECの協力の重要性は一層高まっている。アジア太平洋地域における持続可能で包摂的な成長と繁栄のため、ルールに基づく自由で開かれた公正で透明性のある貿易・投資環境を維持、強化していく重要性を強調した」と述べた。【リマ村尾哲】
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