イスラエル軍は26日未明、イランが今月上旬に実施した弾道ミサイル攻撃などへの報復として、イランのミサイル工場などに対して「精密攻撃」を加えたと発表した。首都テヘランを含む各地で爆発音が確認されたが、被害規模は明らかになっていない。イランが今回の攻撃へさらなる報復に乗り出せば、紛争が拡大する恐れがある。
イスラエル軍は声明で、パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘が始まった昨年10月以降、イランや親イラン武装組織がイスラエルに対して攻撃を続けていることへの報復だと発表した。軍や米メディアによると、計3回の波状攻撃が実施され、ミサイル工場のほか、イランの防空システムなども標的となった。作戦に参加した戦闘機は「任務を完了」して無事に帰投したという。
「第1波」とみられる攻撃を受けた段階で、イランメディアは、テヘラン西部・南西部にある軍事基地が標的になったと伝えた。テヘランでの爆発音は飛来してきたミサイルを防空システムが迎撃した際に起きたものだとして、市内の状況は「平穏だ」とも報じている。テヘラン近郊にある精鋭軍事組織・イラン革命防衛隊の軍事施設に被害はないという。一方、中部イスファハンや北東部マシャドなどでも爆発があったとの情報もある。
イスラエルは今回の報復攻撃に先立ち、イラン国内の核施設や石油施設も標的として検討していたが、イスラエルを支援する米国は紛争の拡大を招くとして反対していた。イスラエルはイランに軍事的な打撃を与えながらも、報復の応酬を避ける計算も働かせて、標的を軍事基地に限定したとみられる。
ただ、今回の攻撃が大きな被害を及ぼしていれば、イランがさらなる報復を検討する可能性は否定できない。紛争が拡大すれば、中東情勢が一層不安定になり、原油価格が高騰する事態にもなりそうだ。
イスラム教シーア派国家のイランはイスラエルを敵視し、ガザ地区のイスラム組織ハマスやレバノン南部のシーア派組織ヒズボラなどを支援してきた。今年4月にはイスラエルが在シリアのイラン大使館を空爆したことを受け、イスラエルに無人機や巡航ミサイルなど300発以上を発射。今夏以降にハマスやヒズボラの指導者らが相次いでイスラエルに殺害されたことへの報復として、今月1日にはイスラエル各地に弾道ミサイル180発以上を撃ち込んだ。
イスラエルは4月に受けた攻撃に対し、イスファハン近郊で核施設を防護するレーダー設備を標的に小規模な報復攻撃を実施。今月の弾道ミサイル攻撃に対しても報復すると宣言していた。【カイロ金子淳】
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