イスラエル軍の攻撃で負傷し、足を切断した少女=パレスチナ自治区ガザ地区南部のヨーロピアン病院で2023年12月28日、ロイター

 パレスチナ自治区ガザ地区で、イスラエル軍が無数の細かい金属片を入れ、殺傷能力を高めた砲弾を住宅密集地で使用している疑いが浮上している。軍は「民間人の被害を最小限に抑えるために努力をしている」と強調するが、専門家からは、軍の行動を疑問視する声が上がっている。

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 ガザ南部のヨーロピアン病院で4月に2週間、ボランティアとして勤務した米国人の外科医、フェローズ・シドワさん(42)は、治療を続けている中で奇妙な症例があることに気づいた。

 皮膚に1~2ミリの小さな穴が開いているだけなのに、体内では筋肉や内蔵が引き裂かれ、大けがをしていたのだ。

 「銃弾ではそんなに小さな傷口にならないし、普通の破片では体内に大きな損傷は起きない。異常だった」

イスラエル軍の攻撃により両手を切断した少年=パレスチナ自治区ガザ地区中部で2024年8月27日、ロイター

 毎日のようにこうしたけが人が運び込まれ、体内からは直径1ミリ程度の粒状の金属片が見つかった。何かの破片ではなく、「明らかにその形に製造されたものだった」という。

 シドワさんがガザで働く他の医師に尋ねると、やはり同じような症例を扱っていた。複数の金属片による傷がある人もいた。とりわけ子供の被害者は、血管や神経が損傷し、手足を切断せざるを得ないケースが多いという。

 ガザ中部のアルアクサ殉教者病院のカリル・アルダクラン広報官(56)も、毎日新聞助手の取材に「金属片の影響で、多くの人が手足を切断した」と証言した。昨年10月以降、ガザで手足を切断した市民らは、子供4000人を含む1万2000人以上に上っている。

 英紙ガーディアンによると、こうしたけがを引き起こしたのは、硬度が高いタングステン製の金属片やベアリングを入れた砲弾だという。爆発とともに金属片が周囲に飛び散るため、殺傷能力が高い。建物内にいる敵を殺害する目的に使用されることもあるという。

手術する医師のフェローズ・シドワさん(右)=パレスチナ自治区ガザ地区で2024年4月3日(シドワさん提供)

 国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の報告書(2009年)によると、イスラエル軍は08~09年のガザ紛争でもすでに同様の兵器を使用していた。

 報告書はこの兵器について「多数のとがった金属片を破裂させる新たなタイプ」と説明。イスラム過激派なども被害を大きくするため、自爆テロの爆薬にくぎやボルトなどを詰めるケースが多いが、こうした爆弾の「洗練させたバージョン」だとしている。

 イスラエル軍のショシャニ報道官は、毎日新聞の取材に対し「軍事目的を達成するため、さまざまな方法を検討し、状況に応じて偶発的な被害を最小化できる手段を選択している」と説明した。

 だが、米シンクタンク「安全保障政策改革研究所」のステファン・セムラー氏は、金属片入りの砲弾を使用する理由について「幅広く死傷者を出す以外の目的は考えられない。(住宅密集地で)使用する意味がわからない」と指摘する。

 だが、金属片を詰めた爆弾は、イスラエル軍による「過剰な」攻撃を示す一例でしかない。【エルサレム金子淳、松岡大地】

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