今年のノーベル平和賞が発表され、核廃絶に向けた活動を評価された『日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)』が選ばれました。
日本被団協の箕牧智之代表委員(82)に話を聞きました。
■『日本被団協』代表委員に聞く
(Q.受賞決定おめでとうございます。率直に今の感想をお聞かせください)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「ありがとうございます。世界の色んな所で戦争が始まっているので、ガザで一生懸命、傷付けられた子どもたちを救っている人たちがノーベル平和賞の候補かなと思っていました。そうしたら、2024年10月11日午後6時、日本被団協と言うじゃないですか。びっくりしました。本当かと思って頬をつねってみました。広島はたくさんの報道陣が来られて、大変な3時間でした」
(Q.世界中の声を聞いてどう感じましたか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「私たちの団体は、核兵器を広島・長崎に使われて、たくさんの人が亡くなって、今でも入院したり施設に入ったり。79年経って被爆者は高齢者ばかりですから。そのなかで、残った者で一生懸命、平和活動をさせていただいてます。私たちの大先輩はもっとたくさんの被爆者たちが国会を囲んだり、厚労省の前で運動したりされたと聞いています」
(Q.ノーベル平和委員会は授賞理由として『被爆者の方々は核兵器による想像を超えた苦しみを世界の人々が何とか理解できるように訴えてくれた』と言っています。どう受け止めますか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「3月に原爆を開発したオッペンハイマーの映画を2度観ました。この人が核兵器を作った人かと思いながら、今までと違った感覚で原爆被害を見つめています」
(Q.皆さんの活動によって『被爆者』という言葉が国際社会に通用するようになりました。これまでの活動の蓄積だと思いますが、どう感じていますか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「日本の『被爆者』が世界で通じる言葉になっていることは、私たちの大先輩が運動をされてきた結果ではないかと思います」
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■今も続く戦争と核の脅威■今も続く戦争と核の脅威
(Q.今もウクライナや中東では戦争が起きていて、ロシアは核の脅しを使っています。世界の現状をどう見ていますか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「核兵器がどんなものか、市民・国民はよく知っていますが、政治家がなかなか理解できていません。『核兵器があるから世界は安全なんだ』という言い方をされます。でも、テロが核兵器を狙うかもしれない。何かの出来事で核兵器が突然、爆発しないとも限らない。アメリカの原子力発電所でも事故が起きたように。そうなったら、ヨーロッパの国々が放射能汚染されて大変なことになる」
(Q.人間は戦争をやめられない生き物じゃないかと絶望的な気持ちになる時もあります。今まで運動を続けてこられた理由は何ですか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「被爆者に与えられた大きな課題ですよ。日本も昔は刀を持って人を殺した。人間はどうしても『あんたが悪い』『こっちが悪い』という言い方をする動物なんじゃないですかね。人間は戦うことが好きなのかどうか。刀から鉄砲になって、空から爆弾を落としたり、核兵器。今はコンピューター時代ですから、小型で強い核兵器を開発するような科学者がたくさんいるんじゃないかと思います」
(Q.ノーベル平和賞が決まったことで、被団協の発言力が大きくなっていくことを期待していますが、どうですか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「私たちが運動をすることが被爆者のみならず、一般の国民も『そうだ。君たちの言う通りだ。核兵器をなくさないといけない。戦争をしたらダメ。平和が一番だ』という雰囲気が作られたらいいと思います」
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■進まない“核廃絶”への動き■進まない“核廃絶”への動き
(Q.NPT(核不拡散条約)の合意を取りまとめられない、唯一の核被爆国である日本が核兵器禁止条約を批准しないといった矛盾があります。じれったく感じることはありますか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「あります。私は去年、核兵器禁止条約の締約国会議でニューヨークに行った時、イベントで言ったんですよ。『日本とアメリカは仲がいいんだから、日本とアメリカで核兵器禁止条約を批准したらどうですか』って。そうしたら、皆が総立ちして拍手してから理解をしていただきました。それができないのかと思います」
(Q.現実の政治の世界はなかなか聞く耳を持たないということなのでしょうか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「政治家はとにかく『あっちが悪い』『こっちが悪い』でいがみ合い。ロシアとウクライナ、あるいはイスラエルとガザにしても、とにかく戦わないといけない。人の嫌がることをする。一番は人を殺す。相手を殺す前に自分が殺される。これが戦争ですよね。そして家を壊す、建物を壊す、橋を落とすというのが戦争。日本も80年前に大きな戦争をして、310万人が亡くなったといわれます。それ以後は憲法を守って戦争のない世界に。世界のリーダーになってほしいです」
(Q.被爆者の平均年齢は85歳を超えました。次の世代へとたすきをつないでいく段階にあるなかで、今回の受賞となります。意味は大きいですか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「大きいですね。日本被団協はこの3日間、東京で全国大会を行いました。私は体が悪いから広島にいて、ノーベル賞もあるから市役所で待機していたんです。そうしたら日本被団協という名前が出たのでびっくりしました」
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■次世代への“記憶の継承”は■次世代への“記憶の継承”は
(Q.会見の時には隣に高校生平和大使がいました。若い世代に伝えていくことが、これからも重要になりますね)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「高校生平和大使もスイスに行かれたり、ニューヨークに行かれたり、活動をしっかりされています。広島・長崎の高校生を中心に。高校生たちがこれから成長して、大学生・社会人になられても今の平和活動を忘れないで続けていってほしいです。私たちはもうあと数年しか命がない。私なんか来年死ぬかも分からない、病人ですから」
(Q.ノーベル平和賞の受賞を受けて、改めて世界の人々に訴えたいことは何ですか)
日本被団協 箕牧智之代表委員
「やっぱり平和が一番ですから、核兵器をなくせと言いたいですけれども、日本の代々の総理大臣は『核保有国が1カ国も署名批准していないから、そんなことはできない』と日本政府も言いますが、来年3月に開かれる核兵器禁止条約の締約国会議には、核の傘にいるドイツでさえオブザーバー参加すると言っています。日本も最低でもオブザーバー参加していただきたい」
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