今、アメリカのエンタメ界に衝撃が起きている。全米エンタメ界の中でもトップ10に入ると言われるラッパーで大物音楽プロデューサー「ディディ」ことショーン・コムズ氏が性的人身売買などの罪で逮捕・起訴されたからだ。ディディ被告は少なくとも2008年から自らの性的欲望を満たす行為をして、その事実を隠すために被害者を虐待・脅迫していた疑いが持たれている。・先月逮捕・起訴されたが、今月に入り。ディディ被告に性的被害を受けたとされる120人を超える男女が、新たに性的暴行、虐待、売春の強要などの罪で弁護士に提訴することを依頼。うち25人は当時未成年で、中には当時9歳の者もいるという。
【映像】ディディ被告と関わりがあったとうわさされるセレブたち
裁判所に出廷したディディ被告は無罪を主張しているものの、もともと各界のセレブを大勢招いて壮大に開いていたパーティには黒いうわさが付きまとい、様々な憶測も飛んでいた。『ABEMA Prime』ではアメリカのエンタメ業界に詳しい専門家とともに、全米を揺るがす大騒動について分析した。
■ニューヨークでは名誉市民にも…ディディ被告とは
本名ショーン・コムズ、エンタメ界ではパフ・ダディ、P・ディディ、PDといった呼び名で知られる大物音楽プロデューサーのディディ被告。ヒップホップアーティストだが、2017年には米経済誌フォーブスで、最も稼いだミュージシャン1位に輝くと、グラミー賞など数々の賞も手にし、多くのアーティストを発掘しては世に送り出してきた。ところが先月、性的人身売買などの容疑で起訴されると、約70億円の保釈金を提案するものの却下。有罪が確定すれば最高で終身刑の可能性もあると言われている。また今月1日、男女少なくとも120人が民事訴訟の依頼をしたと報じられた。拘束されているディディ被告は、弁護士を通じて「未成年者を含む人々に性的虐待を行ったといういかなる主張も虚偽で中傷であるとして、断固否定する」と、容疑を否認している。
今回の逮捕劇は、唐突なものだとは捉えられていないのが実情だ。ディディ被告は元交際相手から、売春をしている男性と性交渉を強いられたと提訴され、多額の和解金を払ったとされる。また3人の女性から性的暴行を受けたと訴えられ、うち2人は未成年だったとされ、さらに部下のプロデューサーからは1年以上にわたりセクハラや薬物を使い脅迫されたと訴えられていた。
今回の逮捕によって大きく取り上げられ注目されているのが「フリーク・オフ」。ディディ被告が主催していた乱交パーティのことを指し、ホテルのスイートルームなどで開催、薬物を使ったり、参加者に性行為を強要したり、さらにはパーティの様子を撮影して被害者に圧力をかけたり、といったことが行われていたとされる。
■各界セレブが集まる壮大なパーティに闇
ヒップホップ翻訳家のShotGunDandy氏は、アメリカのエンタメ界におけるディディ被告の影響力の大きさを語る。「彼はヒップホップに特化はしているが、映画界など他の市場にも関わりがある大物。彼が歌っていなくても関わっている大ヒット曲は多数ある」。また音楽ライターの渡辺志保氏も「本当にアメリカのエンタメ界では広く、そして高く評価されている人物。今回の一連の事件を受けて剥奪されてしまったが、ニューヨークの名誉市民でもあった。それぐらいアメリカでは誰もが知っている顔、名前」と、その存在の大きさを語った。
ただし、これまでもディディ被告に関わる黒いうわさは多かっただけに、受け止め方も複雑だ。Dandy氏は「アメリカ全土が本当に衝撃ではあるが、アメリカ人としては昔から彼はいろいろな闇深いうわさや陰謀論とかにも関わったようなことも多かったので、そこまで驚いている人はいない印象。一番有名な闇深いうわさとしては『ホワイトパーティ』というものを年に1回やっていて、多数のいろいろな業界のセレブたちを集めていた。今回騒がれているフリーク・オフは、より親密でいけないことをしているパーティ。参加者のビデオを撮ったりしているので、誰も何も言えないのではというところ」だと述べた。渡辺氏も「パーティの録音・録画で口封じをしていたと明確に報道されている。『あのパーティはヤバかった。クレイジーすぎる』というのはいろいろなメディアを通じて周知の事実になっている。それでもメディア側は、ホワイトパーティを何か健全なものと報道していた」と、参加者から公言できなかったこと、また現地メディアも“暗部”に触れてこなかったことを指摘した。
今回の事件発覚を受けて、作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は、絶大な権力を得た者の危うさを指摘した。「強大な権力が1カ所に集まった時、人間は権力によって化け物に変わるという圧倒的な事実を突きつけられている。有名なセレブやアーティストが参加していても、それでも気付かないと言い張ってしまえるところが閉鎖世界の問題だ」と述べた。また2ちゃんねる創設者のひろゆき氏も「セレブが集まって、何か悪の秘密結社みたいな話が実在する。誰もが知っている大物アーティストが性的暴行をしている話がこれだけ多いと、他にもいっぱいあるのでは。被害者が20人、30人規模であれば、アメリカではまだまだ出てくると思う」と氷山の一角だと語った。これには渡辺氏も「まだまだ出てくると思う。実際にもホットライン、窓口を開設したら、1日でおびただしい数の連絡が来たと報じられたばかり」と実例を紹介した。
■大統領選に関わるフェイクニュースも飛び交う事態に
影響力が絶大である大物が逮捕されたことで、同時に大量の憶測も飛び交っている。参加者の中には世界的に有名なアーティスト、大企業のCEOなどがいたとされ、また一部では11月に大統領選を控えるハリス候補に関わることも含まれている。これに対して渡辺氏は「本当に慎重にならなければいけないところ。X上の発言でも、一体にどこに確証があるのか非常に疑問。フェイクニュースも流布されている」と、ネット上に根拠のない情報も飛び交っていると語った。Dandy氏も「政治の関連性については、昔から音楽のエンタメ業界は東寄り(民主党派)とかなりズブズブな関係であると言われているので、無理やり周りが騒ぎ立てて、トランプ氏にとっていいようにフェイクニュースを飛ばしている人たちもいる。完全に鵜呑みにせず、利用されている情報もたくさんあると肝に銘じながら注目した方がいい」と注意喚起していた。
(『ABEMA Prime』より)
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